歌人の夢や日常つつみ込む漫画を誰か描かないかな
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ぎゅうぎゅうに 詰め込まれたる 車内から 助け求める 歌詠んでみる
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ご無事でと 見送る背中 けし粒に ただ恋しくて 目をこらしつつ
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紫に朱の差し色や宵化粧 峰みねを染め月を待つらむ
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好きでした、が言えなかった。だってさ、私と同じ女の子だもん。
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膨大な宇宙の隅の午後7時 はちきれ客車で吾すしとなる
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青天の 霹靂へきれきそらを引き裂いて ほとばしる雨 夏押し流す
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還暦を前に思案すボーダーは卒業かしら継続かしらと
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向日葵の種の落つ 残暑は座る 秋の領域テリトリーより 去らぬ夏
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あの雲の動きは僕ら地球人ほしびとの末路を知悉してるのかしら
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シロさんに 副菜のヒントは いただいた きのこのスープ いっちょあがりだ
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ネジ切りで溝を直して嵌るネジ広い心が大切なのね
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豪雨にて 下校停止と アプリの通知 体育座りの 8歳を思う
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行き会えば会うと見る間に立ちゆきてしばしも留む微かの羽風〈オオスカシバ〉
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わたしから距離を取りつつ付いてくる月に過日の処理を任せる
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優しげな光の中にいたいのに星のさらめく消えない迷路
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生きることが肌を掠めて溶けていく見るともなしに灯台を見る
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格安の歌人講演生穂村倍払つても行きたし穂村
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ひとつきを言葉に憧がれ生きむとす来月穂村弘来県
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「え?消える」不思議なゼリーのおかわりを大盛りにしたよく居るおばちゃん
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口の中で消える魔法のゼリーなど反応見るのが楽しいんだよ
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筆先の獣と戯る清書かな文字の本能あるべき場所へ
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金婚の祝い兼ねたる小旅行ふじやまビールにほろ酔う君は
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五十年丸めてポイと捨てるよに金婚旅行の部屋の屑入れ
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健康の ために始めた ウォーキング 実る柘榴を 目印にして
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青き春 すべてうるわし あの日々は  記憶の中で なお美化される
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豆乳で いちごのビスコ 食べたなら また寝ていいよ 体温高い(眠い)
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秋の雲今はもうなき酸素室 命の音がまだ耳にある
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秋雷や 川崎の馬場 ぬかるみて 人も足場を また取られたり
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ラムネ瓶 淡き水色 透ける夏  鬱憤うっぷんたちが 泡と消えゆく
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