美しい雨の名前を一つずつビーズのように通す休日
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布団上融けてくるくるバターの身夢とうつつを行きつ戻りつ
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虫眼鏡で 本をたどる みえるみえる そういう父の 年齢になる
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全部あなたのためなのと喉奥にねじ込まれる愛愛愛怨怨怨
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朝鏡 好きだった香がふと揺れて 母に似てきた肌に気付いて
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自分なり幸せな方選んだよ 昔の私あなたも私
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あずまへと 暗雲あんうん流る いぬこく 西よりずる 群青のそら
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真夜中の 市営プールに しのびこみ ハダカになって 短歌を詠んだ
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千萱ちがやの穂 梅雨を匂わせ吹く風におのが命をふわり託して
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情報の海で溺れて息詰まるそれでも何かを求めて潜る
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東京のすみわたるそら雲ひとつなし太陽は西にかたむく
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新玉葱しんたまを スライスにして かつ節で シャキッと初夏の 味覚楽しむ
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どこでもドア あったらどこへ行こうかな そんな会話と君が愛しい
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幼い日 父の背中で 隠れ見た 紅い満月 目が離せず
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観覧車 ぐるりと廻って ゴンドラを 降りたら君に さん付けやめる
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老医師が往診のたびに持ち帰る折り鶴の群れがいま北へ発つ
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雨後の風 マスクを取りて 吸い込めば お日様の香と 濡れた土の香
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噛み合わぬ 議論に疲れ 抱きしめる 子の温かさ 全身に染む
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梅落とす雨に降られて風薫り山が笑った五月も終わり
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命よりスマホが大事! 当たり前! スマホなくして生きていけるか?
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かわなが 大海おほみかゑりて くも あめ かゑりてまゐ
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切らしてる保湿クリームの代用に日焼け止め塗る 夏の匂いだ
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母がいるベッドはとてもあたたかい 今日も明日も楽しくまいろう
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雨が好きというよりも雨が好きでいたいだけで ただそれだけで
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ちょっとだけいいよね…なんて気のゆるみ体重計はお見通しです
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積み重ね それが何かに なるだろう  そう信じてただ見て見ぬ振り
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今日はまだすることあるが心地いい濃密に降り続く雨音
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少しずつ失ってゆく時間ゆえ今日は明日の思い出となる
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女学生 クリーム色のカーディガン まだ羽織りたる皐月の末かな
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インク壷ひっくりかへしてしまったらもう戻らない僕は詩人だ
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