この岸辺、この角部屋に打ち寄りぬ椰子の実ひとつ抱いて寝転ぶ 0
ジャンパーに春の夜風を孕ませてペダルを回すムササビのきみ 6
死に体で水面ただようきみはだれまだ生きてるよ泳ぎはじめるよ 3
泣きやめば夜明けのそらに星ひとつ睫毛のさきからやがて眠くなる 7
陽だまりにひときわ黒くある影はどれほど高い空から落ちてきた 2
はじめての孤独を告げるまだ暗い午前の居間は青に充たされて 2
颯颯と月明かり照らす広大な野っぱらを跳べ!グラスホッパー 2
なにをそう我慢することがあるのだと身じろぎもせぬ影に問えども 4
沈む陽にそのへんにある石ころや土くれでさえかけがえのない 4
一晩で、ずいぶん形、変わったな。蛹のままで、居てくれよそこに 2
四肢を以て野をひた走る夜明け前 黒いほどにも青くありたい 8