送り火の 煙流れて 盆も過ぎ 夕空涼し 風船蔓フウセンカズラ
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散る桜 枯れゆく芒 それぞれに 清しくあらば 老いを愉しみ
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丸茄子はゆるキャラめいてやわらかく和でも洋でも映える存在
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革靴よ じっとしていてくれないか 連れてってくれ無人駅まで
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電線に留まるカラスは高いソで名も知らぬ星は低いシにある
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栄えてる街に染まった。一駅を歩くこと、待てば電車が来ること。
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「おはよう」も「おやすみ」もない日々だって それでもわたし寝るし起きるよ
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夕空を覆ひ 迫りくる雨雲 蝉時雨止む 静寂しじまなる帰路
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もう二度と「どっかいった」って言うんじゃねえ「どっかやったの」お前だからな
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宿題の残りから目を背けつつ やたらと眠る十五の男子
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今年こそ火垂るの墓を観ようかな ドロップの缶知らぬあなたと
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鼻寄せば紫煙のたたぬ新式の見えねばこその十色といろの匂い
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冬の空 あなたと見上げし その時に  ひらけし未来へ 思いを馳せたり
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快晴から 晴天俄かにかき曇り 激しき雷雨 人の世のやう
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庭園のなんと美し みどりいろ 言葉もなくただ ほうっとため息>アフタヌーンティー
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キューピーの目だけが光る小児科で聴診器の冷たさが不快
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戦後てふときにくくられつづくいまいつまでなのかいまだしらずも
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一億の人間守りし調印書 銃より強しペンと墨汁
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不自由の由を摑んで投げ捨てた 心身共にここに在らずと
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気がつけば暦の上では秋になり 今年も夏服買わなかったな
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空に散る 枝垂れ柳の火の花を綺麗と笑える この空のままで
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溜め息を吐く。水底に沈めたら気泡となって浮上するのに
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あらたしき軍靴を履きぬ戰争が選挙車の廻りにて喚ぶ「万歳」
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父祖の父祖は死せばわれらが敵國の主格を換骨し憎しむ、敵とは
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永久戰犯數長らへる政権の中枢一家に災禍はあら ず
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蝉の屍を確かめしこと。黑白に嗄る仰向けの脚、脚 折畳ね
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玉音、もはや手後れなる日本に響き――、無条件降伏の八十年 後
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萬事健よかなれ よ。口語版教育勅語を起草せる聖・翻訳者
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進駐軍讃歌を唄ふ教師、アルファベットを暗唱せる「自由」教室
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數多滅びし焦土の防空壕の洞へ滴る脂、巌肌凭る骨
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