うららかな 陽射しはいずこ 空は泣き 春の嵐か 慰められず
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田畑を 起こすことなく 草繁る それにつけても 早期復興
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脈を打つ音と雨音相まって 眠りに落ちるひとりリビング
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まっすぐに縫えていないと後戻り なかなか進まぬ刺し子の歩み
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あのころはぼくひとりだとおもってたあさがくるなといのるにんげん
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シュレッダーみたいな顔のハーモニカ吹いて刻んだかなわぬ恋を
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簡単に去らない冬と来ない春押しては引いてせめぎ合う
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春先に コートを羽織る 散歩道 我が愛犬は 裸で遊ぶ
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脱衣所で 服脱ぐ息子 待っている 寒いからって 着せすぎだろう
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あとはただ落ちてゆくだけ花を吐くように響いた夜の終わりに
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居酒屋の話題にことかく暇のなし 病気・病院・惚け・薬・墓
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「異国か」と見まごうばかりの物価高外面そとづら優し「円」の内面うちづら
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吸って吐くぼくらが生きる過程ごと調和していくアンサンブル
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届かない祈り それでも縋るように毎朝響く社訓の唱和
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この先の道をどちらに向けるのかそれを知るのはただ我一人
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鶴の命 絶える前に 食い止めた カリギュラ効果 「鶴の恩返し」/覗かれたお蔭で機織りを止められた鶴
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チビ猫や お疲れ様の病院よ きょうは おとうちゃんと ちょっぱやで行った(おとうちゃんはじてんしゃ)
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腹すかせ 夕暮れ時の 帰り道 晩飯何か あれこれ考え
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しばらくはいいかと しまった腹巻きを 再び装着 シルクの腹巻き
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宝永の 時代ときから伝わる? 五目そば これからも 飽くことなきかな
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犬覗き パット笑顔の 蕗の薹 さっそく天ぷら 犬にはやらず
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電球が 切れる時には 最高の 明るさ放ち 闇に抗う
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目立つこと それだけの者 鉈襲い 春先に下る 天の誅撃
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結局 何も買わずに 立ち去った 吠える仔犬に 惹かれてもまた
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多頭飼い できぬ魚が 纏うのは 高貴な姿 独り構わぬ
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休日 買い出しついで 立ち寄るは ホームセンターの 暇そうなベラ
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うたかたの ゆびをタップし 綴る文字 声には成らぬ うたを浮かべる
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最新の展示場が 楽しみだ 水族館に集う人混み
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縫い終わり ほどけないよう返し縫い 君のことまだ信じきれない
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悠然と 大空を飛ぶ 鳥の群れ 春を迎えに 山の向こうへ
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