きみのため桜の枝を摘んできた花はさらに短命になった
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ぽつり立つ清流の岸の釣り人に幾年経てども亡兄が重なり
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アブラハムを共通の祖とする民たちが戦にあけくるるおぞましき日々
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要介の渡る車道に君がいて脇の支えに胸張り歩く
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ひるねして よるひるさかさ ごみだしの ごじはおひさま なつじかん オハー
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何時もなら はしゃぐ孫らの声も無く 父の日寂しく牛タンを焼く 
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うたかたは AI翻訳 載っていて 火星語からも 三十一になる︵うそ︶
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じしんきて どくただよって じしんきて やまいはやって いくさにいくさ
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くちなしと あじさいさいたと こえかけた おりんあまおと 膝がおれない
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美しい花にはとげがあるそうな 胸を刺したる思慕の痛みよ
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光る陽を黄色で塗った幼き日赤い太陽が正しいと知る
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桃の香を まといて歩く 背のひとつ 誰にもなれず ただ春を行く
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夏休み プール教室 行く時の 天候と気分 人によりけり
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二階なる コンクリ隙間に 芽を出せし 木の青き実を なめて甘しと
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私のこと 好く人なんて いないのは 私も同じく 好いてないから
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暗いなら 明るくすれば いいじゃない 処方せられし 平等の薬
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「せ」と「と」と「う」と「ち」が脳内で弾けては鼻腔に香るみかん/海風
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誕生日だと知らなくてコンビニで買ったぼく用ケーキ、バイバイ
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学校を休んでぼくは見るだけで病が治るという絵を見た
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傘がないことに気づいた瞬間に損を取るくらいには善人
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耳に手を当てては少しうつぶせになったきみとの思い出の音
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「ワレワレハウチュウジンダ」というギャグが放送禁止用語になる日
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ほんとうはペアだったマグカップだけ買ってひとりですするコーヒー
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願いが叶ったことはあったろうか そもそも何かを願ったことは
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洗濯機新しくして覗き込む新しき渦頼もしき渦
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脇を抜けていく車が、紫陽花色に染まる
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あと少し起きていたくて藻掻く夜こんな一日じゃ終われないよ
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不運には先天性なものがあり後天性より治癒はしづらい
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最初は できなさそうと おもっても 練習すれば 大体できる
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電気代今年の夏は考えぬ身を壊しては元も子もなし
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