セーターで布団に入る真っ白な冬毛のつかぬ寂しさと寝る
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ほとばしる 乾くくちびる 湿らせて 食べる饂飩を すいて撓らせ
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新雪のまだらなきみちすすみゆく先は一角獣棲まう森
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北の部屋突き刺す寒さ忘れさす 温もりくるむ電気毛布
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幾年も民を守りし城の壁 朽ちし桜に栄華散りゆく
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古い本のページ開けば紙の匂い亡き作家の息づかいが聞こえる
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街灯の下に浮かびし新雪の未踏の小島わがための孤島
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バーでホットラムを飲みながら目が合う 遠くの街から囃子が聞こえる
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小学生 遊んで帰って 宿題を する姿まさに 平安貴族
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はるかなる月日は今ではなつかしく あきらめぬ心 冬将軍のよう
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なぜだろう こんなに君が 愛おしい 手を伸ばしても 届かぬ想い
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やりたくはないけどやらねばならぬとき母親たちの漏れ出づるダルゥ
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喫茶店 シックなスーツ 着こなした 雅な漢 思わず惚れる
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受け取って 君に恋した僕からの 気持ちの籠った反省文
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キラキラを見てキラキラになる君を見てキラキラになれない自分
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ともる灯の明るさ増しつつ急速に雲は厚みを増す窓の外
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いつの日か「結婚しよう。」と誓い合い 薬指には紙の指輪
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昔よく遊んだあの子はかくれんぼ 隠れたままに陽炎となる
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今もなお 目の端に指す影ひとつ 呼べど応えず春の来ぬまま
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玉鬘たまかずら 揺れる少女しょうじょ花宴はなのえん 夜を照らして冴ゆる星影
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うつし世の聖誕祭に兵は今宵君だけを守らんと
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風そよぎ景色ぐるりと独り占め無量の歓喜誰も奪えぬ
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バッカスも一応酒が入ってるあと三、四日一応控える
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聞く話す笑うそれだけのこと それだけのことで繋がる日々
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完璧じゃ ないことを知る だからまた あなたのことを 好きになる
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冬の宵  満月照らす  君の頬  儚く消える  雪の花
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私だけ死なぬわけには参りませんその日来るのをお待ちしてます
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かたちなど なきものながら光差す ただそれだけで よいと思えり
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宵の空 月や星が輝けど 私の心の雨は止まじて
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新聞に キミの短歌が 載っている ボクと別れた ホントの気持ち
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