一人にはもう慣れたのに 大人にはなれないまま
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越えていく 雲も見えざる 万葉の 風に雪崩なだれる 紅葉もみぢの峠
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パッキンがヘタって垂れる水道と雨音繁し今はウェット
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洗面所はときどき上階うえの匂いして 焦げ臭い時 心配になる
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きときとの バスは満員 坂道を 右にひだりに ゆれて頂上 / 除幕式
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ミントンの和紅茶なんて大好きだ いま和紅茶が流行りとみえる
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肌を刺す 冷たい風の 伝言は 気を引き締めて くじけるなよと
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汗拭きのタオルハンカチ それほどは使わなくなり 有難き季節
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失敗とされるベタ付くクリームを欲する者おり滑る指を持ち
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久々に君に出会えたこんなにも切符小さく手のなか休む
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ラブホテル。コンクリガラが山積みで育まれた愛解体される
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幾年いくとせも京都住まいにあこがれた母は今まだこの町にいる
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切符買い改札に浮かぶ「ありがとうございました」の文字にほっこり
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夜明けまで続く雨音下ろされたとばりとなりて黄泉に眠りぬ
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不意打ちで 口づけ奪った罪と罰 一生かけて償いませう   
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殻を割った向こうには青空がある そう信じた雛はいま、
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丹精におまえが息をこめたならその異形すらおまえのことば
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子供部屋シーツで仕切り秘密基地 幼い息子キミら目輝かせ遊ぶ
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秋深し このくうなる心にはカラスが鳴くもいとおしく聴く
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「なんか飲む?」その1言で1日の疲れも吹き飛ぶ ・・・なんて言えない
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ききかえす ことばは礼と こたえられ 離れたならば きこえやせぬと。
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あめふって つきもないのに 近隣の 家しるえっと みょうにくっきり
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マンゴーと言って軟めの柿の実を母に食わせば柿と見抜かれ
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4年ぶり 神戸ルミナリエ開催へ 点灯時間「薄暮〜」がすてきね
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上掛けと炬燵布団のその隙に潜む猫踏むゥギャァ轟く
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寝落ちかけて 寝返り打とうと左を向き ねこがやってきて腹に乗り上向く
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炬燵かけ待ってましたと我が物のごとくに猫が最初に入り
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ドタバタと屋根上駆ける足音は多分猫だろ、でなきゃ何かな
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疼痛のソナーが闇に溶けかけた我が実存を保証する夜
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海原にたゆむ光の道満ちて星は彼方へ月は何処へ
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