君のこと 私は忘れて生きるけど 私のことは忘れないでね
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もう知らない そう呟いてふて寝した あの夜ですら今は愛しい
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白旗をあげたからもう今日のよき日に寝っ転がってなんにもしない
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いつの間に 頼もしい父 年取って こんなに白髪 多かったっけ、
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緋牡丹の花は綺麗ね 人間と違って澱んだ色がないから
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バス停の経路変更お知らせで花火大会近きを感ずる
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テキーラのあとに喰むオレンジのこうあなたとの夏思い出させる
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君がタメ だったらいいのに歳の差は何年経っても埋まらないまま
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朝食はりんごジュースとツナサンドそれだけで今日はいいスタート
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薄玻璃の 夏に傷口灼かれつつ 瞼の裏に ひとさじの青
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世間では初老と言うがイチローはこれぞ奇跡の五十一歳
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図書館に借りる本などないのだが涼しみたくて散歩途中に
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真っ白い朝顔幽居に君臨す二十代目の僕の王統
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同じ場所の写真を日々届ける 今朝の花は昨日にない景色
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夏空の墓へ挨拶 そちらへ行ったあのこは怖がりだから
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獰猛なネオンの下で夏思う人魚と僕は海をさがして
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断捨離で 捨てられないのは 落書きと 忘れたかった 記憶の貴方
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二人だけ肩を並べた秘密の芽きっといつかは花も枯れるわ
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なぜ誰も見ることのない報告書書かねばならぬ重くなるペン
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終わりなき暑さが遂に十勝まで 熱中症にかかる牛たち
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清夏だけ副業許可を得た双葉パフェグラスからパスタへ移住
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「現場ではまこと格差は大なり」と教師の友はジェラート食べつつ
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背骨をなぞる左手の煙草の匂いまでおなじで泣きたくなる
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兄を抱き墓前へ立ちて両親へ旅立たせんと義姉の悲しみ
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香を焚きうからつどいて経を受け兄と別れの七七忌しちしちにちき
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左腕メメント・モリの文刻む美容師の人所作美しく
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メロンなど 思いのほかに 簡単に ごろごろできる 猛暑に感謝
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少年期ピアノを弾いてた事もある今では労働しおれたわが指
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少年が 排水溝の 蓋を開け 何かを拾う ことに困りて
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メロン狩暑さも忘れ品定め目移りやまぬ欲の深さよ
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