傷口が広がらぬよう虹見れば窓の雨滴がゆるり流れて
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あの砂を集めてつくる砂時計ひっくり返してプレイボール
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鳩の群れに幼子追はれ泣きにけり親に抱かるる平和公園
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「この野郎!素人なのに生意気なッ」と妄想交えてシュートを放ち
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伐られてもなお奪われぬ薔薇色と したたかに在る呼吸の痕跡
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連なりし丹霞の道を憶えてる 身に抱く目に その色彩に
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花束をあげたい人がいてそれが恋だと思いませんか
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愛されたい 愛されたいけどお前じゃない 愛したいけどわたしじゃない、って
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人生が点AB…と続くとき一瞬重なる点Pだった
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何もないなんて今もう言わないで 楽しかったよね? 苦しかったよね?
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思い出と呼べるほどには思い出にならなかったね 空が明らむ
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「流れ星が落ちるね。寒くなったから」電波の悪い部屋にも   星
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十光年先の自分からの光あなたの願いは叶っているよ
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七等星でいいあたしは暗いままきみの伴星として生きたい
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フロントガラスが曇る 宇宙でもきみとわたしはあたたかいだろう
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宇宙って言うといつでも夜みたい 地球のどこかはいつでも真昼
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終わること前提にして共に住み いつか形見となるヒゲ拾う
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月遅れ 叶わぬ願ひ 書き留めた 七夕のそら 揺れる短冊 /田舎の七夕は月遅れ
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もう少し いい加減でもいいんだよ 息が苦しくなっちゃうからさ
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職場での 思いを短歌で 浄化して 人間関係 良化中
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姿勢がいいと褒められたから 帰り道も少し背筋を伸ばす
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くらげみたいになりたいゆらゆらと波にゆられて流されるまま
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幾年も昔の今日のわざわいを知ってか知らずか人は争う
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苦手とは 悪口ささやく背後霊 耳を貸さずに頼ってみよう
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祈りの日 去年こぞおとないし広島の街へ川へ思いを馳せる
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確実に 季節移ろい 秋近し ツクツクボウシ 夕暮れに鳴く
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想い人 夢と同じく 万華鏡 息吞む目前 溶けるよう
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八月の百年先の飛行機は高揚だけを抱えて発って
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帰るのを待っていたかのように雨 泣いていいんだよ一緒に帰ろ
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何一つ成し遂げぬまま陽が沈み それもいいかと手に取る麦酒
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