冷房をつけたらぬるい風が出てごめんね、冬はとうに過ぎたの
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午後10時 お前が吐き出す 最後の止め 両面印刷、ページの順序  設定したのは俺だけれども 
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永遠を定義するなり起動したきみを求める循環参照
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あのように砂子が振れるものなのか春の夕べの西山の雲
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生け花の家元制が日本の文化に根付いているなと思う
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草むしる手を止め見上ぐ空高く飛行機雲が西へと向かう
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懐かしの 道を下って 交差点 君を探せば もう青ランプ
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吸うことは呼吸の半分でしかなく 吐くから次に 吸えるんだよな
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スーパーで特売品を品定め 生産者の顔 踏みつけるように
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ブロッコリ 茎をポキポキ折り捨てて 明日は我が身とふと手が止まる
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猫の生涯さえ我には難し 椅子になりたい 物言わぬ無機物に
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帰省の 夕餉ゆうげの前の つかる風呂 そろり 網戸を這う守宮やもりかな
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道に咲く 白き花びら 灰の空 凍てる木の実に 冬を教へる
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皆が行く コメダは老後に取っておく 若いつもりの60ジジイ
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すぐ終わるなんだかしょぼいGW61年目だというのに
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解放され胡座あぐらを解いた太ももが猫の形に汗ばんでいる
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「僕たちの考えてることちがうよね」 そう言ったのは確かクリシャン
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何かある そんな気がして行ったけど 別になかった その繰り返し
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テディベアはトカレフを隠してほほえむ かわいい以外は全部フィクション
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コンビニに行くならロープとカッターとガムテとマスクとグミ買ってきて
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木の根元一面に咲くたんぽぽと畔に居並ぶ水仙黄色
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友人をふざけて置き去り走り出す少年たちとコロンの香り
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透明なピアノのように指先でアストリッドが弾いているパリ
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ページ繰る音を葉擦れの音として聴いてる初夏の図書館は森
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すこしずつ鳥の居場所を増やすようにニュータウンへと延びる電線
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光刺す部屋で見上げた白い角 あの日私はそれからそして
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遠く見ゆ山膨らみて雨ごとに緑の絵の具塗り重ねゆく
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白猫しらたまは今日も神社に姿なく 今頃どこのお嬢様かな
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あの年のあの日あのとき目のあひてうれしかりしはきらめく水面
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不意に落ちるを耐えたのに。く殺せ 恋の濫觴らんしょう まだ間に合うはず
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