アテなしで空きっ腹で呑むハイボール あっという間に夕風に乗る
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潮の満ちあやつりて いたずらを愉しむ如し 月の引力
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体重計身に覚えなき二キロあり それでもいいから食べるよそうめん
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心臓に直でテキーラ注ぎ込む言ってみるならそれが夏です
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アマプラが教えてくれる昔きみと千円で観た映画の結末
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鈴懸のみちほがらかに颯爽とばいすくる乗り駆けぬけるひと
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歩くだけであなたを殺してしまうなら もうどうしたらいいんだろうね
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運命なんてそうないから赤い糸とかで殺してあげたい
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かなしいと 思えることが うれしくて それでもやっぱり 寂しくなった
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たんぽぽも犬の背中も夏支度 綿毛ポワポワあたり一面
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胃酸で少し溶けたこの愛は 吐いて流してどこへ行くのだろう
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もう晴れもそよ風もいらないあなたがとなりにいなきゃぜんぶきらい
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立ち上がる隔離病棟絶望の『いのちの初夜』のらいの若人
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先代犬まえのこの 生まれた日から 三十年 走る姿が 目に冴えざえと
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あとまわし座ってゆこう各駅で いそいそ励む歳でもなかろー
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人間は気圧計ではないんだよ 正直すぎる体の不調
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田舎町小さな市営プールには 年配の方ぎょうさんいてはる
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両親が離婚してから就活で「潤滑油」とは名乗れずにいる
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25℃乾いた風の昼下がり サボっているのは私だけかな
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営業をサボって泳ぐ一時間 駅のホームで心地よき風
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ちょっとそこどいてくれると嬉しいな 毛皮干す猫 踏めない敷物
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それからは小鳥を抱き生きました夏そらを食む自転車のごと
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おだやかに絶滅をしていきましょう だいじょうぶだから だいじょうぶだから
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埋め方がわからないから散らかしたままで寝ている 部屋も心も
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あああああいいいいいいいうううううえええええええおおおおおおお
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白妙の ウエディングドレス まとひ立つ 晴れのすがたに 幸せ願ふ
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言の刃を ふりまわしたい気分の日 斬ったら切れていたのは自分
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言の葉が通じるものと思ってる その時点で、すでにやぶれた
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風景と対話 あなたはもうずっとやまいそのもの かもしれません
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五月晴れ 洗濯物がはためいて 部屋着よ お日様の匂いになあれ
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