ただの君 あのときの君 これも君 膨らみ満ちる その名前だけ
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お母さん、弟なんていらないよ鏡の国に置いていこうよ
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気を抜けば眠ってしまいそうなほど柔らかい皮の赤い桃
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だれも起こしに来なくなるまで寝てしまう竹の葉がさらさら降りつもる
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あをみ濃き葉によりそひて蔭に浮く宙を和するあぢさゐの白
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の射さぬ座敷牢には虫虫の声聞き描いた夏の絵日
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この納屋にも九度目の夏の塵積もる 兄の名残のはりの縄あと
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納屋に籠もり 兄の名残に安堵する 塵積もりゆくはりの縄あと
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ポケットに海のにおいをたくわえて眠る子どもの七度目の夏
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一輪とて静かに花は華となる雨の日の卓の薔薇の一点
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潮風に吹かれまなこを閉じながら、空となる人、海となる人
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濃き薄き青のあはひをまっすぐに翔びて鴎はこころ澄ますや
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海峡の高速船と競ひあふ鴎の白き低空飛行
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オーボエにまたがる彼は伴奏の熱気で飛ぶよマロニエ通り
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貴方には何が見えるの教えてよ十五年が過ぎ子どもじゃないわ
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新鮮なこころをいためて味をつけ 美味しいソテー「はい、できあがり」
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乾く血のこび付くテレビに 膝かかえ世界の野山に見惚れる夜
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沈みゆく私の心救い上げ その眼差しで世界を撃てば
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画用紙に青色クレヨン走らせて、空を描く人、海を描く人
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ほんとうの顔をおしえて太陽も死にたい日ぐらいあるっていうし
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おるがんのきゃらめる色のは語るどれみふぁそんなこともあるよと
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要介護3の父持ち月一度 孝行息子を演じる帰省
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月を撃て。あの空の裏に魔女がいる。夢よ砕けよ。幻を撃て。
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「これ買いたい」とゴネる他所よその子を見つつ、「『買って』だろ」と思う。性格が悪いので。
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凶星を配置す、血刃走る春がお前を喰らふやうに配置す
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日曜の夜のエクレア、蝙蝠こうもりのピアスと薄い詩集と銃と
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妻と子の名消えし住民票を得てストロングゼロとひとり帰らむ
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いずれにも拡がって散るそういえばわたしたち熱射病でしたね
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「映画観よ!」 日曜、洋画 10時半 いつもオチは 僕しか知らない
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「ほら起きて!」 車でうたた寝 先に行く 母の尻についたホッカイロ
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