夕立がシャツを濡らして肉体はぼくと世界を分けるきっぱり
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ごめんなさい、言葉にするもおぞましくでもまだ家にある君の髪
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指先を少し濡らしてあなたへの切手を貼っています夜です
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季節外れの雪の歓びを知る人の思いの熱さで打ち上がる花火
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ごみ袋使えなくなる情報を知らぬ娘に渡す広報
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ゴミ袋変更なれど店に出ぬ買い置き袋は命拾いする
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どこまでも満たされないで走る背を 追いかけ捧ぐこの一雫
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予告なく来たらシャワーと夕ご飯だってあなたと母娘ですもの
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軽く薄く白くなりゆく父母の あらゆる重みを我が奪っている 質量保存の法則で
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血は争えないね 痛し痒しのその言葉 でも私は貴方を信じられるから
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草花は私を裏切らない 宣う母の愛おしげな横顔 我と視線は交わらじ
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一言の言葉にならない過剰さと非効率さがなんだと言うのさ
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レジ待ちの並びの表示が床にしかないコンビニはちょっと嫌いだ
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さあ飲めよ食えよ内から破壊せよ あの星までにこの身は重い
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今日明日と妻は留守なれど珈琲は二人分淹れ二人分飲む
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眩しさにさらされるたび痛感す どうかあなたも黒さを秘めて
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肥料撒き土を耕し汗をかくビニールハウスの中はもう夏
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潜ったら綿の香りが背にまわり小春日和にぎゅっと抱かれる
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あるはずの翼なくとも空を翔け泥に塗れて地を這い歩く
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マンホールあけたらあとは落ちるだけあなたの襞に底なしの愛
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布団干し冬物一気に洗い干し の恵み受く なんたる幸せ! 
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何処となく心寂しき時ありて街を彷徨い手ぶらにて帰る
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だうしたの春なのに夏狂うつる日本の季節菲常事態だ
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二歳半 妹とねむる母を恋い毎夜吸う薄い黄色のタオル
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夕涼み そんな言葉が ピタリくる 真夏日の春 ラベンダー揺れ
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勤務終え 疲れをほぐす 暖かな風と 花やぐ春に癒せり
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友達の気持ちを君が思いやり 百点とるより父は嬉しき
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公園で女子と遊ぶ約束を したと聞いて父はニヤニヤ
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そんなにももう熱々じゃなくていい キャベツとしめじのミルクコンソメ
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ゴムボール隣家の庭に蹴り込んで ピンポン押せず遊びが終了
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