朝食を作った炎が盛る部屋 良かった夢で これも悪夢か?
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名作を「青空朗読」で聴くうちにキーを打つ手のいつしか止まりぬ
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矍鑠かくしゃくは褒め言葉なるや 老人の 知らぬが仏の老害なるや
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苦しんでばかりの日々を照らす灯は煮た大根の意外な旨さ
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生ぬるい夜を眠らず起きていて明日からの地獄にただ怯える
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更けし夜に詠う詩の音はなく けれど私はたしかに歌い手
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来世など信じやしない 次もまた人に生まれてしまうのならば
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会えないを会わないとして閉じたからあなたはずっと居なかった人
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赤子の脾臓を取り出して壁に投げたならばどれだけ柔らかに膿が飛ぶでしょう。
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変わりない日々に満足していると動けないほど老いてしまうよ
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大好きな貴方に贈る竜胆に込めた想いは仄暗い欲
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雪解けのハエも素通り犬の糞 人糞ならばどれだけ愉快か
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人工的自然美礼賛する阿呆 命にルビ振り馬鹿射精/弘前桜まつり
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今夜はね 会えない人に会いたいと叫ぶ曲だけ飛ばしたいのよ
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花が似合うあなたの「笑み」が好きだった 花で埋もれるあなたを見て知る
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木曜に塗ったばかりのマニキュアが剥がれる日曜 家事したくね〜
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不眠症曇りのときでも仮初だ 太陽が眠るその時を乞う
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惰眠越えノロノロ歩く自分にも眠る前の陽は照らしてくれる
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少しずつ身につけて行こう人並みの生活まずは息を吸うこと
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春服と 冬服上着 あと少し いききしながら 暖かさ待つ
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二年前部屋に飾った海の写真 手繰たぐる記憶のあおより褪せて
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反抗期 親も反抗 買い言葉 わかっちゃいるけど 親も人間ひと
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春雨じゃ 濡れて行こうと 言う俺を 無視して傘を 差して行く君
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徳用のドレッシングの容器には騙されたんだドボドボと出る
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仮の名で呼ばれることに慣れすぎて真の名前を名乗れずにいる
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山笑い 笑いすぎた 目の端に 涙滴り 次の季節に
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一矢いっしではむくえぬならば二矢にし三矢さんし たばねればやすく折れまい
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分け合ってやわらかチェルシー口にするおひとついかが?道産の味
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呼び捨てで名前呼ばれる幸福感 名付けてくれたばぁばに感謝
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岩塩を洗濯機に入れ丸くする 削れて溶けておなじになった
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