秋の日は つるべ落としと キミの言ふ ねこたちはもう ねんねのしたく
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烏瓜からすうりの つる螺旋らせんは 無口なる 「自然」の漏らす 不意の冗談
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「出来ない」の文字が笑って自己紹介 僕の名前は「やらない」ですと
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言ったきり 返って来ない メールなど 出さなきゃいいと 後悔しきり
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夏の日を 思い出す度 蘇る 陽炎のよう 夢のまた夢
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眠すぎる 夕方なのに 明日も又 一日があり いつまで続く
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温暖化 嘘だったのか 騙された 十月なのに 毛糸の帽子
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満月の美しさだけ表せる形容詞を君に使いたい
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暮れてゆく雨の寒空灯をともす民家の窓の暖かきこと
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心音がこの世の常と申すなら受けて立とうぞ海歩くとも
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賑やかだ飛び交う話題は違えども皆ひとときの味覚を好む
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「できない」と思った時は「カツを食う!」それしかできないアスパラ添えて
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溜めていた君への想い杯に冷えた器に熱はこもらず
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・可愛いあの子「来るもの拒まずだから」 まず来ない場合どうしたらいい?
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青インク ゆっくり落ちる ガラスペン そのにじむ字が 雨の日に似て
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インスタントカレーの箱を床に投げつけたくなった 「寒いからじゃない、」
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日没時 チャイムが響く 遠くまで 儚さ包んだ 怪獣のバラード
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自分嫌い なのに短歌さくひん  作り出す 悲劇のヒロイン ここに誕生
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我が街を ミニチュアサイズで 俯瞰する それでも目立つ 滑稽な私
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絶対を好むあの人は空間のせいはやっぱり嫌いだったか
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秋雨の冷えた静寂身に受けて 朱のにじんだドウダンツツジ
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東京の鳩は逃げない 東京の鳩じゃ逃げない
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雨降りに熊は出ないか傘さして散歩に出よか出る出ない出る
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奥さんと初めて人に言われては十月十日が奥さん記念日(笑)
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インプット 輸血のよふに血は騒ぎ 壊れる細胞呑まれて生まれ
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アンニュイなジャズが相応し光なくただ開けるを待つ冬の扉を
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研究書ちょちょっとめくって床へ置く短歌の重みにおそれをなして
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霧雨や 南天淡く色づきて 雨に煙るまち 大阪のまち
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雨あがり止まぬワイパー忙しなく 私の心と正反対ね
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冒険に燃えてるみたい 通常の散歩コースを外れゆく犬
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