部屋があり扉があるということの、時に身震いするほどの意義
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「嫌いだが、在るのはしかたないもの」に世界のほとんど全ては入る
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キャンパスに制服達こうこうせいがぞろぞろと もうすぐ僕も先輩・・になる
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三年を煮詰めたように君が弾く もう二度とない 旅立ちの日に
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元気かな しばらく声も 交わせない 忘れないでね 声もわたしも
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清貧は知恵を授ける不便さも心持ちよう涙振り切る
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また今日も風呂は見送り洗う髪リンスもせずに気は整って
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二切れを来ない娘に取っておくラップの下で涙するシフォン
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返事なく通過して行く日曜日あなたにケーキを食べさせたかった
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お話をしたい相手が誰でもいいだと切ないな ネットを泳ぐ
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誰かのため 過ごしてきたの 残りはさ わたしのために 生きると決めた
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なれなくたっていつまでも何かになりたい何者でもないわたし
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もう飽きた冷めたわけではないみたいあの日の熱を今もう一度
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そっけないきみがかわいい顔文字を使う世界線 流れる火球
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なん日も遭難したように食べるきみ かずよく噛めだれも取りゃしないよ
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生きること 挫けそうだぜ こんな夜 酒は呑まずに シューを喰らう
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全幅の 信頼寄せちゃ ダメなのか いくつになっても 正解できぬ
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低気圧 おまえにだけはかなわない 頭も痛いし関節も痛い
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婚姻は希望と恋により成され 愛と連れ添い終わるものだと
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今生は誤操作だったと思いたい つぎはかわいい猫になりたい
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明日もし世界が終わるとしたならば わたしは方舟つくるだろうか
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ふりむけば いつもどこかで 分かれ道 選びつづけて 明日も生きてく
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独りで良かった 家事の擦り付け合いにならないもん やるしかない
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私もう、安い女じゃないのよと唄うカルメン寝たら忘れる
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おかあちゃん おてれびみてると つまんにゃい ちま猫ちゃんは あぴーるするよ
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水中のような粘度のこの浮世、不器用ながらわたる犬かき
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茜色染まり林檎が唄う部屋 教科書読みつ口ずさむ秋
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寒戻り 氷雨加えて 寒さ増し 肌に刺したる 世情厳しき
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乗る前に温まっていた助手席のシートヒーターをずっと覚えているんだろうと思う
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海育ち漸く盆地に慣れし吾に「盆地恋し」と海に暮らす息子
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