こっそりと隠れるように盗み見るまだまっ暗い四時半の空
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今日の夢の続きを見れるのならば幾らだって惜しくないのに
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おれだけ苦しいの間違ってるから 換気扇の下で咳をする
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あの夏の記憶凍らせ眺めをりもし溶けたらばきみは消えぬべし
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学研の電気図鑑に喜ぶよ速やかに我に買い与えよ君
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ゲームでも読書でも芋を焼くんでも何でもできて何もできない
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何もかも投げ出したいなと思ってる一体これから何度思うのか
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金メッキはげてもあいしてくれますか 真鍮のままのわたしもですか
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寝るまでの時間をずっと言い聞かせ自分に言い聞かせてまた眠る
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あの時に家出できずに律儀なる吾にいまさら馬鹿と言いたい
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娘にも子の権限がある物だ縛る我が母飛び立つ我が
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潮騒が私を見てる涙すら声すら出さず波に引く砂
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太陽のような笑み、君は春生まれだったね あたたかな君だものね
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大人って 子供と比べ 面影が 十年じゅうねん振りも 割と変わらず
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君の前で少しかっこつけたかったからまずFコードを練習した
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横書きの国に暮らせば言葉とは野をどこまでも駆けてゆく馬
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面倒だすべてがすでに面倒だつぶやく午後の湯沸かしの音
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ずるずると言い訳ばかり口にして正しいことも分からぬ夜更け
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空を飛ぶ夢を見るたび 同じオチ 君のいる街へ 急転直下
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朝焼けに透かして赤い君の耳少し齧れば血の味がする
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ツーショット 卒業式の思い出を 直視出来ずに モザイクにする
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昨年の 雪ではしゃいでいた僕を 今日の雪見て 思い出してね
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一四〇字決まった字数のなかにおさめるのは得意 そこだけで息ができる
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大鬱かましてるとき来る通知すべてに助けてくれといいたい
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漠然とどこかに帰りたい ここのほかに帰る場所もないのに
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足音が怖くて息を潜めてるパルコのトイレで暮らそうかな
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古い町午前六時の鐘を聞く窓の外では雪がしんしん
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じょうずにやりたい生きるとかそういうのぜんぶできないことばかり
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君だけに君が好きって言ってたら今ごろ手くらいつないでたかな
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猫ということを忘れた吾輩は人間として生きるだろうか
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