きみの手にみちびかれ入る深き森くらくしめりてほのあたたかく
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気がかりが耐え難くあるこの世でも光は不足なく流れ込む
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扇風機つけた途端に風下を陣取る猫に夏を見つける
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最後には 「フィクションです」と お決まりの 言葉で括った 頸に浮く赤
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街角を 三度曲がって 着く距離に たぶん出会いは 転がっていて
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はじめからいなかった人の代弁はあなたにもわたしにもできない
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体温と湯船の境が無いもので 溶けて流れてやがて大海
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おむすびは祈る家族の一日を 今年初めて蝶が横切る
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SOSは部屋にしまって出かけよう 電波時計が命じるままに
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何もかもいやになったと言いながら明日の服を考えるひと
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両の手に 抱えきれない 花びらの 色の掠れを 覆う陽の白
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飛び降りて人差し指をコメカミにそおっとあてて「パァン」といった
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君のことわかったような顔をして哲学の薄墨をするうた
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春の花 満開になる頃 彼は泣く 訳は聞かずも 分かっているよ
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一般に 欲は破壊を もたらせば 愛は世界を 構築できる
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一般に 欲は己を 追求し 愛は他人に 己を捧ぐ
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自らの 欲をひたすら 満たすより 他人のために 愛を捧げん
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愛すれば 愛はおのずと 湧き上がり 愛されるもの 鏡のように
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愛のある 人を探して 幾千里 出会わぬものよ 愛がなければ
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荒波を 泳いで渡る 人生を 望みて今や 波間に独り
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話すこと 制限すれば 人はただ 書いて心を 暴露するのみ
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偽善より 正直でいる 事選び 嵐の中を 真っ直ぐ進め
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コロナにて 出会う機会は 減少し 触れ合い減りて スマホに頼る
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なんだって 抑えていれば 爆発し ガス抜きすれば 命長らえ
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自己愛の檻の外には平凡な人生という冒険がある
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風のないスカスカな眼の存在に読んだ本から阿修羅の宇宙
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存在と不在は違いすぎるので境界線を引く余地もない
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走り書き「水兵リーベ ぼくの君」我にかえってちぎったページ
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人混みに紛れて捨てられている ぐにゃりと曲がった傘は私だ
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悩み事 一切合切 炉にくべて 燃やしてしまえ 全くの無駄
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