なにごとも選べぬ吾にぎこちなく老扇風機は首を振るのみ
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「推し」が好き 貴方が生きてるだけで好き 貴方の輝きが私の主食
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貸りていた教科書の隅「バカ」と書き笑い合った日 忘れずにいて
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飲みかけで君が置きたるコカ・コーラ ベッドの下に置き去りの夏
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北東の空にたなびく五重線 楽譜詠めない今が悲しい
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強くあれ 人と争う こともなく 優しいだけじゃ 本望遂げず
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検診に 行く前だから 緊張し 眠れないのか 情けないやら
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罪のため 人に触れ合う ことさえも 恐れていれば 善も遠のく
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ひっそりと 貧民窟の 佇まい これでいいのか 我が道なのか
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新しき 世界を広げ 挑戦に 満ちた人生 歩めるはずが
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自らの まわりに築く 塀のため 世界は狭く 視野も限られ
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持ち物を すべて調べて 武器にする 何か忘れて いないだろうか
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いじければ 全てのことが 色褪せて 正しいことも 曲がって見える
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君の為つけたピアスを揺らしても なぜか寂しくなるだけなので
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おはぎの味がしないのは残暑とは違う汗の記憶が濃いから
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ラーメンの脂に映える照明の明るさにふと天井仰ぐ
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夥しい「出会わなければよかった」を載せて地球は縮み続ける
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郊外のイオンは膨張を続けやがて街ごと呑み込むでしょう
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変わり目の寂しさよりも気兼ねなくチョコ菓子買って帰れる涼よ
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抱きしめた熱は日焼けの跡に似て 向日葵たちが枯れても好きだ
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終わりゆく夏の気配を分かち合う孤独なおばけは木陰に溶けて
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眠い目を こすりてみても 幻は 人を誘いて 消えて現れ
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黄昏て 欲も希望も 枯れ果てて 生きているのが 哀れに見える
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女々しいと 女に振られる 元となり 頼りなければ 男も好かぬ
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ふと見れば 老いぼれ犬が 尻尾振る 情なしとは 己の姿
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秋だ!子らが叫んで落ち葉燃ゆ。焦げ茶のジャケット、どこ仕舞ったかなあ。
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への字口マスクに隠しアクリルの彼方に響く嫌味に相槌
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道の上ツクツクボウシ転がって、嵐のような八月終わる
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在りし日の祖父母の家は和風です。夜の縁側、晩夏を過ごした。
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風呂桶の真ん中空いて吹きすさぶ秋の夜風を涼しく思う
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