マスクとる君を初めて見た時に鳴ったチャイムと雨の匂いと
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カニカマを割いてマヨネーズと和えて三筋みすじつまんでハイボールを飲む
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あの人のこと知りたくて借りてみたカフカの『審判』二行で返す
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戸を開けて最初の呼吸が肺に満ち心の上辺をすすいでいく秋
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剥き出しの言葉は無くて果たされた義務深き沈黙の凄みよ
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イエスタデイワンスモア この曲がトリガーと知りぬ 秋タイムマシン
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朝からジャー 朝からジャーを繰り返す トイレの神様 今日はご機嫌
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秋の句の一文字置けず寝かせども夏日のせーでぜんぶわすれた
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音楽を聴き泣けるような心はね貴重だからさ大事にしなよ
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面影を数えてひとつふたつとす その指先に私はいない
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ただ一つそれを支えに生きてきた願い静かに壊れてく夜
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2、3回長袖を折る制服はベストバランス秋の始まり
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雲が割れ一筋眩しくさす光君の笑顔はそんな感じだ
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数寄者すきものそやされたくて忍ばせた 七本骨の折り畳み傘
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のみこんだ町をイオンが吐き捨てて色を奪いてあとかたもなく
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この先に 夢も希望もないけれど ただ静けさと 草の香があり
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自販機の生卵買って帰った日 振り返るだけで過ぎた賞味期限
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ポキポキと前歯で砕く枝豆に思い出さるる盆の夕暮れ
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換気扇止めて気付いたコオロギと鈴虫と冷蔵庫の音
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昼飯のカレーで焼けた上顎を霜の降りたるウイスキーで焼く
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長袖を着てはわざわざたくし上げ手首に感ずる秋の空気よ
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虫刺され眺め今夏を振り仰ぎ おぼろな記憶にコオロギの遠く
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この風は秋の素粒子滲ませた学校帰りの君のくちぶえ
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いつかもうあなたやわたしでなくなって出会わなくてもよくなる日まで
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伏臥位ふくがいは有鱗目のエソロジー イグアナ亜目オオトノゴモリ
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世の全て厭わぬフリをしているというのに左の耳よ 謀反か
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ふにふにのほっぺが可愛すぎるから唐揚げにして食べちゃおうかな
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この夏の日焼けと傷を制服の下でひっそり飼い始める日
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ピカピカの秋刀魚さばいて三枚に 食す家族の笑顔想いて
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眠れずに昔の歌を口ずさむ 現にしたい夢もないまま
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