六文渡(Wataru Rokumon)
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泳げ、彼女の一部が言った。まずは岸に着け。死ぬのはその後だ。
『忘れられない、それがあなた』より

波静か 菜の花枯れ枝 ホトトギス 汽笛青空 飛行機雲
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とくも掻く手も 届かぬ君へ 口をつく 「楓」の歌詞は 「変わらないもの」
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凍てついた 道を掻き分く タイヤ痕 吸い殻は ビンカミノールの如く
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星もなく 息を潜める 半宵の 街は浅雪 レフ板に浮く
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暮れ前の 枝に翳った半月と 氷瀑の成す 墨絵の世界
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肌色の 湯呑茶碗の底のおり 煎茶の香りが 瞼に触れる
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新玉が 産直市にすまし顔 外には真白の 紙吹雪舞う
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春霞 峰に落ちゆく日の玉は 五ヶ月前の 線香花火
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朔風に 急旋回する飛行機へ 煙草の炎を かざす屋上
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ライターの 炎ばかりが鮮やかで 雪に潜んだ 灰色の冬
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生きるのを 正当化する 声もなく 棲めば墓場よ 塞げよ人生
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高波が テトラで瑪瑙を砕くなか 膝と赤切れを痛めて帰る
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生きねばならぬ 生きたからには本人が それを望まぬ 地獄としても
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暗闇に 擦ったマッチと手が浮かび ただ寂寞なる 冬と鬱屈
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くさむらに 錆色の葉が降る季節 「ナァ」と鳴いては 擦り寄ってくる
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眠れずに 管巻く私を置き去って 空は薄墨 山際映ゆる
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薄明と だんじり担いだ壮年の 祭囃子に 秋を又聞く
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「生きていますか?」 リマインドにまた「了」を押す。 明日の私に宿題を出す。
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指を揉み 乾きに時間を感じては 五本あったなと理解していく
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月明かり 釣瓶落としの六時半 野良猫は背を丸めて睨む
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夕立に 煙草の煙を被せても ログインできる 悲しい世界
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午後7時 「暗くなった」と呟いた 鬱で休んで 無駄にした夏
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暗海に 響く漁船のエンジンを 遠巻きに送る 緩やかな風
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また吸った 不安の頓服 メンソール 言い訳ばかりを 考えている
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いつ止むや 知れぬ雨足 軒先に 逃れ逃した 煙とサヨナラ
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失せ物を 煙草の煙で埋めたって 割れた心は 戻らないのに
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空腹を 煙草の煙で誤魔化して 葉月の日差しを 睨め付け返す
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薄曇り 先の見えない暗海に 水平線を 描く灯台
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ぬるい風 沖に佇む客船の ゆるやかさにふと 救われる夏
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めおと去りし ベンチに常盤木の葉が一つ 燕は夜に翻ける
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