六文渡(Wataru Rokumon)
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考えることは痛みを伴う。
しかし考えることはできる。(「荒れ狂う光」より)

夕立に 煙草の煙を被せても ログインできる 悲しい世界
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午後7時 「暗くなった」と呟いた 鬱で休んで 無駄にした夏
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暗海に 響く漁船のエンジンを 遠巻きに送る 緩やかな風
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また吸った 不安の頓服 メンソール 言い訳ばかりを 考えている
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いつ止むや 知れぬ雨足 軒先に 逃れ逃した 煙とサヨナラ
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失せ物を 煙草の煙で埋めたって 割れた心は 戻らないのに
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空腹を 煙草の煙で誤魔化して 葉月の日差しを 睨め付け返す
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薄曇り 先の見えない暗海に 水平線を 描く灯台
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ぬるい風 沖に佇む客船の ゆるやかさにふと 救われる夏
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めおと去りし ベンチに常盤木の葉が一つ 燕は夜に翻ける
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春中の カヌレを齧る 沿線は ピアノと涙と 4月のかをり
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居残って 咲く春を散らす 雨の慈悲 惣菜コーナーに 筍は無い
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人間の 1億ちょっとの画素数じゃ 見通せやしない 翠色の海
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涼しきや 新芽が層を成す時分 半袖は未だ 箪笥に籠る
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春雷と フロントガラスを滑るのは 雪と見紛う 桜の花弁
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荒れた家 汚れていても 家だった 親の介入 止められなくて
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燃え落ちる HOPEの煙が苦い皮肉 小さな箱から 引き抜かれてく
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4本目 吐き出す命 煙となりて 僕のいつかは 私の光
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酔った日は 詠みたいものよ 僕の歌 僕しか知らない 希死と奇跡と 軌跡と瑕疵と
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僕だけが 僕の痛みを 知るひとり 揺らめく意識 燻らす煙
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弾き出す 煙草の灰と 私の火 いまに枯れる花 あの星の
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墓までは せめて墓まで 独りでいるから いつかのきみと 冥府で逢いたい
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項垂れた 目を擦らせる 煙草の火 お前は今でも 正気であれと
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底に向け 細るグラスが 寂しくて 七味のハツは 残り一切れ
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何羽の鶏が 死んだのだろう 焼き鳥の ハツを食らって 喰らう夜
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七味振る タレを舐って 焼酎の 辛さを喰らって 今日も独りよ
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生きている 《カルトは春の季語らしい》 お前も俺も 迷える羊
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心臓の 音で揺れる首 赤信号 静かに歯車となって待つ
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十二度の 細雨は春の柔らかさ いつとは無しに 冬は去りぬる
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エアコンが 無くても外気が平気になって また一つ季節が巡ったと知る
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