「死が怖い」 ふたたび呟く。 「死が怖い」 何も変わらない。 いずれ僕は死ぬ。
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この心 そう簡単に 止まれない 君に押された 恋も慣性
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不完全 一度崩して うち捨てる 思い切りは創作の秘訣
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家中に散らばる 私だったもの これから私になるはずのもの
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秋晴れに 白球追いし 旧児たち 打たれた本塁打アタリも 清々しいかな
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たまたまよ ネコ二匹よと 母は言い お土産たくさん わざわざのくせに
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左胸の奥の奥から滲み出るこの熱情を何と呼ぼうか
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捨て猫に傘のみかぶせ立ち去ったそのやさしさは冷たい雨で
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傘の下 前ゆく夫キミのシルエット 丸くなったね お互い様だね
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カレー屋のカルアミルクが ジョッキサイズ 数年ぶんは飲んだ気がする
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正体を見せろ名前のない雑務。リマインダーよ、明日は必ず。
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週末があっと言う間に過ぎていくおとなの時間少しせつない
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考えがまとまらなくてキャンディをガリガリ噛んでおしまいにする
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花すすき づままにさまを まなこを細め嬉しきと見ゆ
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死んだツバメよ 明日を飛べない冷たい羽根よ 何を残して空に還るか
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同じよな目に遭う君の傍らで「分かるよ、俺も」言うよ何度も
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家の中気を使われて俺一人加湿器ばかりコポンのたま
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蚊帳の外このまま部屋に留まればコロナと共に消える己が
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父辞めて居候などなったよで自分が自分でなくなる心地
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出られないではなく出ない引き籠り忍耐力の修行のようで
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こんなにも荒むものか、と寝転がり三十一文字に浄化して吐く
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明日から同じ気持ちで笑うのはすぐは無理だな、閉じ込めすぎた
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ひきこもりニート病人不登校少し分かったハミ出る孤独
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自堕落のような暮らしの最終日防いでたのかだらけてたのか
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北風がそっとスイッチ押してゆき木々にぽつぽつ灯りがともる
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深夜二時 オリオン見たり 南東に 十月半ば 冬はすぐ来る
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どなたか一緒に行ってくれませんか、賞味期限の向こう側へと
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勇者ではないが村人Aなりの日々も案外楽しんでるので
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かすれつつ経路を上書きするSuica  なんか恋愛みたいでいやだね
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みそ汁へたっぷり入れる鮭・やさい狩猟の民のすえなる夫へ
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