ぐずり出す我が身に付き合い夜をく浮腫んだ体をさすりてあやす
11
塩辛い水面みなもが誘い呼んでいる誰かの声の波は首まで
9
屋上にきれいに揃えた靴を見てまるでいつかの玄関のよう
9
カーブミラーの陰でタバコを燻らせる 先の見えない私がひとり
7
あなたの思考を知りたい あなたの許容範囲が解りたい これって多分あなたになりたい
4
塗り込めたコンクリートの壁ひとり分凸が浮かんでひび割れて
10
人間は本能的に死を拒む今なら分かるつらくとも生きろ
10
ねむりからめざめたように秋がきて落ち葉とくるみがワルツを踊る
12
お母さんがいないスイミングおわりだったらビールのほうがいい
3
「スミレちゃん、リスカしてるらしい」寝たふり私 毒の鱗粉 少し食らった
3
しょっぱさが身体を壊して進んでる気持ちさで食らう台湾ラーメン
5
賑を横目に歩く宗右衛門町 タバコで夜を吸っているのに。
5
しっかりさんの「ありがとうございました。」背中で聞いちゃってごめんなさい。
2
パリソウル やりたいこととしたいこと キャンセル界隈夜が老けてく
3
現在地解らず街に墜ちてゆく 壊れた翅の夜間飛行
6
朝ご飯たべたら一緒に寝るのにな ねこたちや何故この時間なの(0時!)
9
ねこたちは ふみふみ・ごーん ずつきする 何故かって?ビックリ 朝ご飯だよ
7
目に沁みる汗に残暑をぼやきつつ見上げた庭の柿はたわわに
9
涼し風 季節は向こうからやって来る 早番の朝 深呼吸
6
見よ空を 星々たかく月遠く文明の火は絶えることなく
8
あざやかなままのみどりは陽を透かし猫のまつ毛もこまかくぬれる
8
アコーディオンとパリの街は似合いすぎる Opéraオペラに向かう地下鉄の中
8
目の前に 広がる世界は 俺次第 諦めるまで 何処へも行ける
12
背中には 「何」書いてある? まだないか、 背中で語る オヤジを目指す
13
あの星の光も夢も掴もうと降りそそぐ空に両手を広げる
7
ああそっか、わたしはこれでいいんだと 何者にもならなかった自分
4
あちこちのお寺に眠る友訪ねお弁当べんと持ち寄る墓参りツアー
14
重力にあらがうぼくがあらがわぬきみに満たしたかりそめの海
6
お彼岸のお参りおえて安堵する葬送おくりたる友六人になる
15
忘れなくていいと思うと安心して忘れる時間を作れた/「海のはじまり」より
9