にんげんをやめたくなったことのあるにんげんだけがなぐってもいい
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夏ぼらけ君いぬいまに覚ゆるは窓はだかれど吹かぬ風かな
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間違いを認めもせずに往く人の愚かさゆえか、夏がこわれる。
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季節よりラヴレターが贈られる。「影っちゃるけん、代わりに愛を」。
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ジョッキーに前に行くなと伝えたい だから言ったろ最後で失速
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笑わせるつもりで話し笑われる そんな気持ちでスナックへ行く
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大岡さま 白州で交わす ひと模様 罪人つみびとの眼に 流る水玉
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「ドアー」というC級ホラーのポスターに 引き込まれぬようご注意の文字
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子どもらに去年の浴衣着せてみる つんつるてんだユニクロ行こう
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真ん中に穴のあいた丸椅子で 知らんオヤジと相席をする
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ガタガタとする丸椅子の串揚げ屋 玉ねぎフライがやたらウマい
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赤飯を炊いたのかなと匂わせる 思わせぶりなごま塩のポスト
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生活の並々ならぬ退屈さ。それを言祝ぐ君がいとしい。
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天然色脳内補完で観る白黒のブラウン管懐かし/題『三丁目の夕日』を観て 
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下向けば箱庭の見ゆ上向けば空をひっかくヒカリエの窓
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現世から月へと旅立つ音楽家。ゴリラがバナナをくれたあの日に。
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積乱雲ぐんぐん伸びて豪雨前。 浴衣の君よ、果報を寝て待て。
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改札前ごった返す群衆に自我も紛れて夜よ、さよなら。
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推しの子の劇情劇に我忘れ。届かぬ愛の碧さ、きらめき。
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隔世かくせいの街を産み出す人波ひとなみおぼれしわれはひれも無きうお
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炎天下 真夏の法事 焼ける道 慣れぬ革靴 靴底取れる
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布引の滝の自然のクーラーか 最後に行ったのいつだったろう
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風鈴の鳴る外気浴でうたた寝を なんと贅沢 日曜の午後
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淡白に見えるのはただ見えるだけ わたしを出すの不器用なだけ
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五輪見るマリー・アントワネット 本当はオーストリアを応援してる
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夏休みは君と会えないから辛いよ まあ会えたとて話せないけど
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炎天下設えられたステージでチアダン踊るちっちゃい子たち
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日記帳開けば君との思い出が あるはずもない胸が苦しい
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病む人に希望を届けたバタフライ 悔し涙も金以上の価値  /池江選手
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浅いなと思うような詩すらも、深く読める受け手の感性
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