雲のみね さしあふぐれば高知るや あめ御蔭みかげ須彌山すみせんのてい
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教会に行きたかったと思いつつ 腹痛その他 ただ治まるを待つ
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鉄線を越へたる葛の先端が虚空に伸びて左右に動く
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広げたるシーツの上にすたすたと飼ひ犬が来て足跡つけぬ
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休みかと母の問ひたる昨日にて会社辞めしと我の答へぬ
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潜っては浮くカイツブリ 水面に波紋が広がり映る雲も揺れる
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現代詩集を読む 詩人略歴を見るとやたら東大早大が多い
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豪華客船は港を離れ人々はしきりに手を振っている さようなら
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朝バナナ後 食あたりっぽい症状が ねこが心配そうにみている
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何処へ行く 宛もないけど ただ乗りて 登ってみたい3000メートル獲得標高
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朝早く奴隷トロッコ渋谷まで四十年間通っていた父
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居心地の悪い世界でちぐはぐに棘を感じて降る夏の雪
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信じたい微かな希望飴色の夕日のように諦めがつく
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赤い目のうさぎを撫でて抱きしめて十五分程時間を潰す
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最近は死にたくなっても君がいる笑い合う意味分かってきたから
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ひとつずつ 無くなる未練 軽い胸 指折り数え 残るは二つ
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よくとれた写真もぶれちゃった写真も何より大切なものになったよ
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旅終わり普段ハグなどしない君が駅で抱きしめてくる切なさ
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東京に着いた機内で君の手を握って君も握り返して
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搭乗のゲートの近くで食べるすし 君の笑顔が眩しすぎるよ
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札幌と思えぬほどの陽射ひざしうけ手をかざしつつ二人で自撮り
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まだすこしチェックアウトにがあって ティックトックで笑いころげる
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朝ごはん食べるホテルのレストラン 君に差す陽が美しすぎて
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「明るいよ」照れる貴女あなたと交わって 朝陽あさひのなかに別れを感じて
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ブラインド閉めずに寝ちゃったからこその普段見せてはくれない寝顔
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手をつなぐ 俺の贈ったアーカーのピンキーリングが触れて嬉しい
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もがいても 代えのきかない特別に なれないのかな わたし『なにもの』
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よく似てる あなたとわたし 微笑んで細めた目元 写真のふたり
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ドタバタと深夜よる騒ぐのは母さんと猫1と2とあとあれは何?
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浴室の排水口に逃げてゆく泡美しく左巻きかな
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