くたびれた袖を捲ってつり革にかけた手を這う人工冷気
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一定の間を保ち黙立す早朝電車様式美あり
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緊急の地震速報身構える またも能登の地ご無事あれかし
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週末の気疲れたたり床で寝て 緊急地震速報で起き
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「死は救済」毎日脳が語り出す午前六時の始発の前で
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小雨降る 紫陽花のその 草むしり 誰か落とした ハンカチ一枚
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人生で大事なものを思ふ時 在るモノよりも見えぬが浮かびし
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7バーディーの猛追運も味方だと古希が笑顔になった初V
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リヤカーを引いて行商半世紀句を歌を詠みまた見せている
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階下より味噌汁の香のただよひきてパソコンを閉ぢ朝食に向かふ
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富士さんを 登る余多のライダーに 今年も君は晴れ晴れ笑う
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死にたくてだけれど光は君だった 愛されている、だから死ねない
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ほろ酔いの頭でセールひん注文は できず半日持ち越せるなり
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明日はね義母ははに借りたる本を読む お固い本じゃない 愛蔵版コミック
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写メールのいいねスマホで撮った今日いいね宅配プリントアプリ
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駄菓子屋をダガシャーと呼ぶ子らのチャリ 「駄」の字を知らず風は吹いてる
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カレンダー千切る「思い出にするな」と記憶に代わり叫ぶミシン目
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マニキュアが艶めくまでを重ねては揮発を遂げる香りいにしえ
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ジンソーダ飲みたい飲みたい飲みたいな 微かな頭痛を無視できなくて(しょぼん)
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居酒屋の シャッター閉まる 音を抜け 涙を拭いて 歩けよ歩け
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愛すのはいつも首から下だけでそれでもいいわ満たされるなら
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失恋後友の励まし頼もしく愛は一つでないのだと知る
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走れどなお 追いつかれる日 その日まで 思考差し出す 目は離さずに
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喉の奥 枯れた痛みだけがあの時の熱をまだ覚えてる
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青春はちっとも分からなかったけど 視界の片隅に居られるだけで良かったの
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思うより辛い現在ミライじゃなかったな 過去あの日に君がいてくれたから
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眠れない 眠くなるのを 待つしかない この1粒の 眠剤が効くまで
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夜更かしの 袈裟の吹けての 垢さ座め 今日麓にも 至る月よか
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近頃はフラッシュバックの甚だし 幻燈機など思い出したり
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イライラし短歌で気分転換をしようと思いうたかたに来た
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