藤色が 似合うねと言う きみといる 息子が寮に 帰ったあとに
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妻に言う 私でも推しに 全然負けてない 普遍の権利 それは人権
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同じ夜 同じ手癖で抱いたもの 思い出せないのもう僕だけじゃ
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時には一つの文章で息苦しくなるくらい言葉は強し/詰まった風の韻
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君の見る世界はどんな色なのか 私はどんな表情なのか
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疲れてたって泣いたって メイトープリンは買わないとない
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ちょっと見て 血がにじむ指も見せたいし 割れたコップも見せたいんだけど
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終わらないと夏が駄々こねアスファルト焼き尽くすような日差しでさす
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「抱き合えば窓のガラスが曇りだす部屋ありますか?」と不動産屋に
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潮干狩り「粘土いじりが好きだった」の妻のバケツ さすがずっしり
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害虫より身を守らむと熱帯の植物は身を辛くせしにや
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憂鬱な 予定を前に 呆然と 短歌を詠むよ 現実逃避
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同居する 私の中の 陰と陽 圧倒的に 陰が優勢
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ただいまと 長女猫あのこに囁き お供えの 金魚ゼリーは 下げよか悩む
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あっぶない 歯ブラシ・洗顔料 手に取った ねこ母ちょっとお疲れモード
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粘膜でなぞる背骨はいつもより甘くて痛いやっぱり罰だ
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受話器越し ひぐらしの声 聴かせける 息子の優しさ 嬉しく思う
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長月に入るや否やジャパネットのおせち予約の早割DM
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義理立ては 人も自分も 偽って 誰のためなの 後味苦し
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雨がやみ尖った草木と彩りを踏みしめていき秋を知る猫
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早々はやばやと鳥は見つけた秋の味 庭に散らばる柿の食べかす
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いつもより風が涼しい広い部屋食べきれない鍋つつく秋の日
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先逝けば 有無を言わさず 送り役 後に生まれし 者の運命さだめ
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楽天で 防災グッズを 備えつつ そうまでしても 生きたいか問う
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平らかな黄金こがねの海がこの嶋に満ち満ちるまであとすこし待つ
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巻層の空や 行先など知らぬ 向日葵はまだ顔上げて居り
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こんな大きな墓の裏に行き倒れの蝉が落ちてひとり/敬愛する放哉先生オマージュ
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君という アプリを消した スマホから iCloudに データを残し
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眠剤は 友であるのにも かかわらず 僕の不眠に 付き合ってくれない
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昨日の 酒と眠剤の 気怠るさの 重たい朝を またも迎えた
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