きみの声聴くと逃げちゃうわたしなど なんにも知らず鈴を転がす
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きみを産む三年前にここへ来てきみと同じ海を見ていた
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七草の春と秋とを言えるかと母と数える答え合わせに
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奈良古道深き森は蒸し蒸しと何千年も風を待ってる
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いにしえの唐古・鍵遺跡の埴輪たち牛微笑んで馬安らいで
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ロケットが棺桶に似た静けさでどこかの星にうずもれている
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あまりにも違うふたりがゆいいつの模様になってきみが生まれた
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つがいてふかたちを未だ知らぬまま睦むふたりは泉のほとり
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ふたりだけの秘密だよって言う君のしたり顔にやられた春
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人民よ無益な殺しを憎むなら 戦争せたたかわぬための政治たたかいをせよ /「民主政」
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言葉でも絵でもなんでもいいからさ自分の世界を表現したい
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立ち上る土の香りに包まれて 蛙鳴いてる夜が更けてく
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海が赤色に染まりやがて青に沈むころの透明な時間
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もうこのまま汗のなかに溶け出した 私の夏を全部愛して
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いつから夏が苦痛になったんだろう あの日の僕ら 陽射しのなかで
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象の子がやさしく丸く傍にいて気持ちもそれで丸くなりおり
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逃れたき世界のことに怯えおりされど救いも世界の何か
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もう無理だどこか行こうとする肌に塗り込む無駄なこのサンオイル
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泣けるのか暴れられるか叫ぶのかそこまでできぬ半端なみじめ
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苦しみのきもちをロウに固めおり残り短し明かりも暗く
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誕生日 月命日と 重なりて 息子と二人で ケーキを供え
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この世には飲み下せないものばかりあなたがくれる嘘だけ食べる
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斬新に髪の毛切ってひるがえすワンピースの裾足取り軽く
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充分に生きたと思う伯母の死は手本となりて丹田にしまう
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賑やかに職場女子会 ほぼ毎日会えど話題が尽きぬ不思議
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重力は疲れた俺を椅子に落としついでにズボンのチャックも開けてた
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会場は綺麗な空気ただよひて有元さんの典雅な世界/近代美術館
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(この)草むらに 抱かれて土に還るなら あの日の夢を 永遠にみれるか
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共感してほしい させたい なんでしてくれない ゴールを見失う口
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どうすれば… 得体の知れぬこの悩み いっそ身軽になってしまおうか
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