潰せばかすかにサリチル酸メチルが匂う そんな大人になりたい
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建国の王なき国のアメリカにプラグマティストの国王即位
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AIが深夜のテレビで読んでいる 今日のニュースも明日のニュースも
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きみは言う 海を見るぼくとぼくを見る海が入れかわってた気がすると
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先生はいま大事なこと言いましたよ…」って言われ目覚めたら無人駅
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高速のレーンで回るカルフォルニアロール取りそこない続けてる
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「悲しいなら足して下さい卵焼きの砂糖は」料理研究家が言う
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どこまでが風でどこからきみなのかわからないまま手をつかんでた
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頭皮ケアのため被った ニット帽 髪の毛も温もりも守られ
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きみの言う「知らない星座」はまだ知らないままあの空に今日も瞬く
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たましいの傾くほうに歩いたら聞いたこともないコンビニに着く
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すこし酔いすこし眠そうに歌い出す本格的なきみの到来
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背後から異国の言葉聞こえるがひとつも分からず信号を待つ
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黎明の霜降る浜に酔狂なウエットスーツの波乗りの人
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浪しぶき浴びても知らじ浜千鳥 散歩の犬と老人の影
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かぎろひを背負いて眺む白浪の轟々たるや館山の浜
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えっ「閣下」苔むす国のおさが言う諂うにおい暴君トラへ
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前開きの服を探した介護初期どんな服でも今では着せれる
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どうせなら完成せずにいて欲しい未来を想うインスタレーションサグラダファミリア
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旅の宿 朝寝を愉しむつもりでも 結局いつもの時刻に目覚め
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福寿草 陽光ささぬ厳冬に 頑なまでに蕾を閉じて 
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少しだけ 昼間に春を 感じては 夜は結局 まだまだ真冬
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「今年は暖かいね」と言った翌日 積もる雪みて出た白い息
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少しだけ ぬるいと感じてしまう冬 外帰り手を 洗う冷水
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愛おしい 眼鏡を付けたまま眠る あなたの頬の 布のあとさえ
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後悔はしないと思うそう言った自信無さ気な生命いのちの軽薄
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好きよと言ふ 口の形は同じでも おそらく意味は 違うの知ってる
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流れるよう老いてゆくもの抗えば静かな川に波立つ水面みなも
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夢で逢ふ 亡くしたばかりの犬児いぬころも 聲を忘れたファムファタールも
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まぶた閉じ ひつじ数へど 迫り来る カーテン裏の 朧花色おぼろはないろ
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