諦観
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投稿数
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白みがかる空に押し出されるように空洞社会は今日も目覚める
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夏来てほしい?ときみが聞く六月の朝日は夕陽みたいだったね
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ほんとうのさいわいは銀河にあるという それならわたしの銀河はきみだ  
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「またふたりきりだね、カムパネルラ」夜、祈りの汽笛を確かに聞いた
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ビニールの傘は無限に増えて、でも生きてるだけで御の字らしい
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期せずして同じ色の服着ていても短編小説にすらなれない
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永遠に消えないで首の筋肉痛 たしかにわたしは、きみとわたしは
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わたしたちに呼び捨てされても岩手県をイーハトーブと呼んでいる父
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そうめんを食べてもわたしの血は赤い 飽きちゃった、五月のプレイリスト
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点滴の跡が薄れて消えてゆき わたしはほんとの退院をした
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「だれか紹介してよ」って、そうですか。もうきみのレジュメ刷ってあげない
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ごめんって言えないままで金曜日 それだけで世界がこんなにも嫌
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人生は引き算だよね、失っていくことだけが事実なんだね
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成城でも別に道路は汚くて犬が妙に白すぎておかしい
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死ぬ前のラスト5秒のカウントがあの子の声とかだったらアツい
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寂しさと羨ましさと憧れで足の踏み場がなくなっていく
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恋人か否かだれかに聞かれたらちがうって言いたくない距離感
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「たぶんきみもハマるよ」あの日の一巻は完結したし、もう忘れるよ
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立ち漕ぎでペダル踏む畦道だけは ちょっと泣いてもいいってルール
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きみが押すコバルトブルーの自転車はきみよりわたしの歩幅を知ってる
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アイラインに沿わないやさしい笑いじわ あなたはわたしの宗教でした
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でこぴんで極小社会から弾かれた あの日から十年 息、できてるよ
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フルネームのバランスいいねと褒められて すべて認められた気になってる
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「普通だね」嘲笑混じりに言うきみは、挫折を知らずに生きてきたのね
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うっすらと侮蔑してるよ、カラオケの選曲あるいはまっすぐすぎる目
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燃え尽きることなく無理せず省エネでなるべく正しく幸せでいて
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あなたって、案外普通の人ですね。ビビって損した(とまでは言わない)  
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鍵付きの日記を見せ合う共犯は答え合わせをするかのように
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一度だけ言われた「死ね」を百億回わたしがわたしに言ってるね、「死ね」
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砂浜にヒールが埋まり、身長とこころの内が今暴かれる
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