青春を初恋をまだ古希だからあと五十年しつこく熱く
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ともだちに耳を倒して上を向く このひとになでられてうれしい
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だいすち、と心の中の三歳がふぞろいな歯をむき出しにする
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いんげんで ごまあえつくり だいこんを こぶでにつけて しめじご飯 
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でんきだけ ふりかえできず こんびにへ あとは越冬 こたつでてれび
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智恵子のいう ほんとうの空 垣間見し あだたらの野に 霜満つる朝
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床に落つ長い髪の毛掻き集めヘアドネーション出来ぬか思案
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極北の漁村の娘が街に出て化粧覚えた塩梅の花
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寝る前に冷たいお茶を買いにゆく晩秋という空気が満ちる
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妻も娘も真夜中3時起こさないよう句を歌を詠むウォークマン
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街灯の明かりが鳴りを潜めると月を一人にさせぬ星空
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巨悪にもひるまなかった「報ステ」の「報道」部分のネオンは消えて
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何にでも詳しいんでしょう?と君が言う何も知らないんだと僕が言う
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我の手で母の名書いた冬パジャマ 袖通す夜はちょっと切ない /ケアハウスで着るはずの…
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擦る手を 暖める息 色つかず 待ち遠しいの 一面の白
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「酒なんて飲むもんじゃない」 彼はそう呟きながら紹興酒飲む
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悪さして初めて書いた反省文 最後の似顔絵それいらない
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睡眠薬を飲んでまで行く場所じゃない正気を保つのに忙しい
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おかいもにょお買い物 いっていたは(とくに)あまえるよ スリスリ・フミフミ ねこかわいいな
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降って消え降って消えして斑雪はだらゆき日陰に残り冬進みゆく
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一度でも それたら終わりの 人生に ガードレールつくるの 私の仕事
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真夜中に 「ベガ」と名付けた 携帯で 夜空を写し てのひらに冬
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うたかたの 詠み人の顔 想像し 温もる心 静かな夜に
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秒針がカチリカチリとわらうので歯を剥き脅し時計を睨む
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いつか僕がお金持ちになったなら あなたを愛する権利を買いたい
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止まらないまだ止まらない靴下がピクミンなのにドリブルがまだ
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このままじゃ進めないから嫌いにはならないけれどすきをやめるね
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足元を這いずる影の持ち主をたどる勇気もなく目が醒める
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美意識の高い男に明日からなろうとビール飲んだ時だけ
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知恵も力も及ばず帰りたくなるがひとりぼっちに夜は長いし
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