雨と雪、やさしい日差し、第六感 空から降るのはそれだけでいい
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退職のお祝いに鉢植えのシネラリア 渡されて今も窓際に咲く
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いつもより薄手のコートで街に出る 春が私に手招きをする
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問いを見ず コントラストの強い「はい」押して後悔 「削除しますか?」
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四千キロメートル北へ行く旅の途中の白鳥かれらそっと見守る
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赤と黒、白で満ちてる月の裏 鴉の卵を煮る鍋を探す
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雪解けてついに露わなる田んぼ水面凝視すノスリ目敏し
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孤立する その度あの日を 思い出す 私が独りじゃ なくなった日を
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お弁当 微熱を払い 詰め込んで 玉子を巻けば 目も回る朝
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朝日出て 二人迎える 年始の日 今年も共に 仲睦まじく
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三月のダウンコートの内側にこもる発芽をするための熱
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くもり空 ねむそな眠そうなねこは ぼんやりと ねたりおきたり たべたりねたり
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身が朽ちる業火と雨で奥底の この感情も いつか原石 /「宝石」
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ポケモンの赤と緑を語る父「みどりはたぬき」と答える息子
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フュリオサを観た後でまたデスロード観てしまったよ悲しみ深し/マッドマックス
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四年前に買った革靴を脱がなければ ラップトップかなコンビニ弁当
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何秒で点滅するのかすら忘れた サラバ交差点
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春雨の濡らす大地は黒々とはるかあなたは筋肉隆々
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状況をいかに字数みそひともじに収めるかそれだけのみが楽しみみたい
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桃ゼリー猫がくれろと鳴くもので一口出せばケッと言って去り
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ビールぎ がない時に こころあり
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時止まり このまま子供で いれたらと 思う甲斐無く 季節移ろう
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燃え落ちた昼の残骸を貪って夜空はかがやく月を孕んだ
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さみしさをアクアマリンの水槽に放てば揺れる鈍色の背びれ
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この家をさてどうやって畳むべき片付け方は得意ではなく
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常世ではドリンクもWiFiも無料だがこのドアを開けてはならない
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梅、桜 艶やかに咲く 共演に 春の陽気が ほっとするかも
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胸の中枯れた薔薇に満たされて音がしているシャーデンフロイデ
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夕食は何がいいかと猫に聞く「にゃあ」とひとこと短い返事
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喉渇き二月十四期限日の牛乳見つけ飲んでみたんだ
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