瑞乃ゆみ
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141

よろしくお願いします。

素粒子までほどけた「私」でもきつと同じ選択をするのだらう
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旅の空懐中時計の古りがたき音しづかなる甘き涙へ
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のこされたスケッチの山を詰め込みて旅立つありしきみをはむと
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密やかにそぼ降る雨の響くとき凪ぎゆく心が求むる本は
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後ろ向きでもいいとあの頃のに各駅停車の切符を渡す
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いつかの日拾ひしうつくしき羽は大事に仕舞はれ羽ばたけぬまま
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薔薇きけばまして偲ばゆうるはしき館に密めくをとめの茶会
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この涙あはき三日月縁取りてきよき影落つる可惜夜あたらよをゆく
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明日もまだわが花園が狭くとも変はらず笑顔をくれるだらうか
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チーズ食むひとときパリのアナトールわが自尊心ゆき惑へるに
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天国より越え来し小鳥軽やかに虹の彩り縷々と響かす
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折り鶴の真白は夕焼け恋ひながら味噌汁に立つ湯気をまもらふ
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この象はきみのやさしさの形だと微笑むきみが持つ哲学書
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澄みやかなこころの種を植ゑてゆく世界が花で満ちゆくやうに
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絵の中のちひさなる手の持ち主は泣くわれの手を強く握れり
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鳩の群れに幼子追はれ泣きにけり親に抱かるる平和公園
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まつげ伏せ幾度も撫でるやはらかな愛犬の眉間思ひ出す夜
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ふみかはし互いのたましひの欠片を抱へてけふも「わたし」を生きる
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嬰児みどりごのやうなる無垢をひとかけらブローチにしてそつと胸へと
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ラムネ瓶割りて集めし硝子玉冴ゆるわが水晶玉なりき
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ちひさき手さまよひながら本めくる 其より始まるこの生の記憶
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素数とは如何なる数か知らざりき密かに憧れたる其に泳ぐ
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陽をうけて歩きをりしに萌え出でし歌の芽スマホにそと育てゆく
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差出人不明の古き茶封筒開けばあしたの道は変はらむ
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極寒のさやけき夜空飛ぶはまだ知られぬペンギン真昼の夢の
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湖底なる幾夜もの光の墓標まもらふきみは木蔭で咳をす
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この耳にだけ届く歌のやうなるきみの瞬きは夜空へ消えぬ
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病院の冷たく光る薄暗き廊下を見つむる五歳の瞳
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この気持ち撃ち尽くし黒く染まりたる紙、薬莢とともに消えゆく
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梅が香てふ練り香いかに薫らむと思はず出でしつばき飲む夜
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