瑞乃ゆみ
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よろしくお願いします。

息をするさへも躊躇ふ葡萄酒のごとき言葉に包まれしとき
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幾千の針も隙間なく刺しゆけばまるくならむと笑むきみと生く
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狼の遠吠え響く我が身体今すぐそこへ駆けてゆきたし
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もれ出づるあの月影を飲み込まば透きとほるほどやさしくならむや
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扇子見るたび思ひ出すフィラメント幾千といふ挑戦の先の
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ネモフィラの青が殖えゆく鉢 いつか家一面に咲くを夢想す
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かすみ草のやうなる声で詠みたしと思ひ募りて水やり過ぎぬ
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ドーナツを分け合うときはいつだって穴をとってゆく人だったね、と
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歩きつつ見上げたる空は花曇りわれまだ見ざる桜そに見ゆ
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一人だけ昇格できぬままいつか褒められし笑み落つる夜の海
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聖なる夜そと放たるる詩にみなの吐息がとけてゆるやかに消ゆる/連作「朗読会」③
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詠ずるに生まれ変はりし言の葉を密やかに飲む葡萄酒のごと/連作「朗読会」②
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われわれの魂に触るる人の声その詠ずるは祈りのやうに/連作「朗読会」①
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宛て名なき手紙を食みし白山羊が詩を零しながら歩きをりてふ
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いくつものゆびきり心の片隅にそつと重ねてさやうならまた
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霧雨を浴びて歩けば地のたまに吸ひ付く音の響く地底へ
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折り句「さくらもち」/くら舞ひ ゆる身ぬちの 針盤 らぬ春の 図を樹の下に
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まつすぐに突き進みゆくきみのあと残されし花のしるべは消えぬ
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この傷は私だけのもの花びらでやはくくるみて歩を進めたり
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海の底丸まり寝ゐる怪獣の氷涙ひるいを食めるちひさき魚
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賑はふ店ひとり食めれば我とけてシェイクがからだに甘く満ちゆく
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ぶだうパン食めばおぼゆる小公女かのパンはさぞ甘かりけむや
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さざんくわのくゆる匂ひのすくへるを眦に引けば零るるあか
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硝子玉にコーティングした心ゆゑ月のひかりもはじいてしまふ
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あの夏の記憶凍らせ眺めをりもし溶けたらばきみは消えぬべし
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受け取りしひかることばを蓄へつつ軽やかにその海泳ぎたし
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その軽きことばは鈍く降り積もり其より抜くれどまた降り積もり
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リコーダー吹きながら歩く帰り道練習中のうぐひすが鳴く
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生まれてもゐない時代のあの家に泣きたいほどに帰りたかつた
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いくつものひかりの扉が待つてゐる図鑑を抱き眠つたあの日
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