Utakata
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瑞乃ゆみ
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もう知らぬ街だと思ったふるさとは変わらぬ顔で迎えてくれた
19
いつまでも胸の内にはめいっぱい駆け回るきみ撫でられるきみ
10
散歩中いつもの花壇覗き込み朝露光る葉に吸い込まれる
8
雨の音だけが小さく響く朝靴音鳴らし瞼を閉じる
9
普通列車に揺られて帰る満ち満ちた心が零れて夜に浮かんだ
5
通り雨仰げば太陽に照り映えて 大切な荷物抱えて走る
8
四年ぶり友と再会するも雨 手をとりあって駅へと走る
8
見上げると複雑に絡む電線 幾多の営み日が落ちてゆく
8
魂の容れ物深く眠ってた 長かった、でもようやくここまで
8
鳴き尽くした蝉そこここに落ちていて翅だけ残し砕けゆく夏
6
カート引き歩く後ろでクシャクシャと枯れ葉あやめる音が聞こえた
9
でこぼこの地面を確かめるようにきみと歩いた道踏みしめる
11
じっと地面見つめて歩く己という器の中を歩いているよう
9
ひこうき雲私の
澱
(
おり
)
を乗せ忘れ三つそれぞれの空へ消えた
6
旅立った瞬間に間に合わなくて きみのたましい翳りなくあれ
4
見上げれば枝切られた木の影濃くきみがいる気がした黄昏時
2
きみの鼻息かと思ったその一瞬 風の姿を借りて来てくれた
5
きみという子がいたことを歌に詠む百年
後
(
のち
)
も色褪せぬよう
9
きみとの想い出すくい上げる度きみののこした色が濃くなる
2
隕石がおちて滅びゆく恐竜たち
他人事
(
ひとごと
)
だとは思えなかった
4
恐竜たち戦いの末
斃
(
たお
)
れゆくあの眼を知ってる 愛犬の、あの
6
羽根ペンにインク吸わせてしたためるその
文
(
ふみ
)
はきっと菫の匂い
9
届かぬとわかっていても祈る日々それが自己満足だとしても
10
巣にこもり友らの日常垣間見るもはや雛鳥ではない我は
5
きみの写真毎日見ては宙を撫で 柔らかな毛並みのあのあたま
4
洗濯物干しつつ涙あふれ出す乾かしてくれこの水分も
9
「普通」という多数派に入れなくて我の行く先ぼんやりかすむ
6
我の道 亀の歩みで進んでは甲羅の中でゆらんゆらんと
5
去来する意味もたぬもの書き散らし舟を漕いでは意義を求めて
3
夕陽から巨大な白き翼伸べ我らを知らぬままとけてゆく
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