窓からは差出人のない手紙癖のない字は自覚なき毒
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ありったけ人を愛して生きることあなたにとって歌詠むことは
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終りに苛まれているいまは浅くながい眠りのような雨です
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セックスは自分がキモチワルくないことを確認したくてするの
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欲望の切磋琢磨を目指すんだ 人とロボット 共に彼方かなた
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独り身の降伏圧がまた一つ「出席」ごとに記録されゆく
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雨粒が夏の名残を溶かす夜わたしは私抱きひとり寝る
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ああわたしたぶんばかりをつみ重ねにせバビロンが風にくずれる
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日常はきっと自然に戻り来る その勢いに身を委ねたい
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鯉などのゆっくり泳ぎゆく池のめぐりをもっとゆっくり歩く
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揚羽蝶はばたきをやめ降りてくる風のながれのそのままの軌道
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コスモスの雑多に咲いた庭の辺に夏の盛りは遠ざかりつつ
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続く雨 不快に感じる布を脱ぐ 毛並みを失った猫の肌色
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いつだって君のことだけ想うのに君に逢えない君に逢えない
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もう来ない今日がとびらをくぐり抜け猫はいまだに帰ってこない
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お金って使ってなんぼそうだよね何かに化けるそれを楽しむ
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「きみ」「おまえ」「ぼく」「てめぇ」「あなた」英語ではみんな等しくyouと呼ばれる
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今日は伸縮性を考慮したガラスの靴が量産される
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コオロギに音痴なやつもおりまして私に愛を迫るんじゃない
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亀が鳴く世界にぼくがいないのは亀の甲羅の中にいるから
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手のひらに雨粒握り僕は行くクラゲみたいな月のない夜
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目覚めれば火星のことは夢になり火星の家畜が地球の社畜に
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だろう迷路だけどけれどもどの道の先はつづいてつづいてゴール
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詠まなくちゃいてもたってもいられない河野裕子さんの歌集を読んで
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ためらいも 溶けるように忘れてく 解き放たれた明日のわたし
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もう二度と脱ぎたくないですジェラートピケ この優しさに包まれたなら
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暴力に「非」を付けていく 日常の「非」を消していく 付けて消す日々
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あなたとはただ会釈するだけになる 今日は言葉を交わしたいのに
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陽射す日の鏡面としての地表が俯くひとにあつまっていく
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下向いているひとたちに「あたらしい顔よ」みたいに「あ」を投げている
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