今日もまた稲を凝視す鷺の目は育ち具合を確かめるよう
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葡萄にも一房一房個性あり人間よりも遥かに多様か
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勾配を歩いて見上げる葡萄畑いちめん青空吸い込まれるか
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もう二度と会えない人の夢を見る 夢の中でも仲良くできない
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水槽のかたすみで死ぬ小魚に未来の自分を重ね見ており
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還暦を家族にお祝いされている かつて不倫をしていた父が
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あーそれは望み薄ねと占い師 せめてタロットめくってから言え
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今だけは動かないでと祈りつつ妊婦の腹に手を伸ばしゆく
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ホルモンは 自分で作る! 今日聞いた 言葉そのまま メモして学ぶ
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灼熱の 葉月終わりの 熱風も 汗と涙は 消せないらしく
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サヨナラの代わりに一筋光るのち、海の向こうへ夕陽が還る
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慣れぬ手の 姉に洗ひてもらふ髪 目にむる泡 昔日せきじつの夏
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ここには居ないはずなのに香るあなたが目に浮かぶ
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久しぶり手紙書いたら笑ったよ漢字ほぼない子どもの文章
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恐いよね 不機嫌そうな 人増えて 仕方ないよね 愛がなくても
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黒丸の音符が誘う空の旅どこでも行ける僕らは自由
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秋楡あきにれの 照る葉の向こうに 日が沈む 涼しく長い 夜が始まる
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昼の月 二百十日の青空に 上弓張かみのゆみはり 白くかすかに
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風呂上がり ブローがさほど苦じゃないし汗も吹き出ぬ 秋なんだなと
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たびたびは日本へようこそと思う銀座線シートに縮まる脚
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入り来る風ひんやりと陽は暑し豆の葉そよぐ秋なんだろな
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あまりにも可愛い夜に不意にキス サッと交わした「もぉ〜」いない君
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憎めばいい腹立てればいい無理してる君の大人ぶり私は嫌い
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サラダ記念 二十五歳が呟いた「アレって短歌だったんですね」
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ごごごごと音する見上ぐ柿の木を群で飛び立ち空に散る鳥
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蝉だってこの温度には驚いて鳴いているのか泣いているのか
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ラインして 電話をしても 繋がらぬ 不機嫌なのか 当たってました
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ペタペタと行く先猫がついてきてくっついてくる乗っかってくる/暑い
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なぜ人は死ぬのかふいに知りたれり地球がずっと青くあるため
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そんな気もないのに君に恋をしてきみどり色のシャツがおにあひ
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