遮光カーテンの 隙間から漏れる わずかな光が 怖くて僕は 眠れずにいる
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人よりも大事にされる猫がいて、少し寒いが暖かい日だ。
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「一缶三十円で買った偽のコーラがあるよ、夏が来たって」
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マーラーのアダージェット 葬儀場 なんとなく安堵 果たせた約束
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旅立ちの棺に副へし萬葉集 母の愛でし歌栞挟みて
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わたしのに ならなくていい こっそりと隣で影を踏ませて欲しい
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可溶性 潮解性あり この私 涼しい場所に置いてください
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ラザニアが美味しそうねと笑う君 確かにうまいがそれは躑躅アザレア
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さよならは胸の水面に降る雨のようで波紋がずっと消えない
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満たされたわけではないよ あきらめただけだ神社の枯れた朝顔
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君のことを案じて買った海色の切手シールも減らないままで
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「消えたい」 という気持ちだけがうず高く地層のように 固く積もって
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存在が形に残ってしまうのがこわいと泣いた 透明人間
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このドアを誰かが開けてみるまでは確定しない存在、私
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饒舌に 語る私に 明日はなし 連休前に 老害ありや
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あれがだめ これがだめでも それがある 彷徨うばかり 業を背負いて
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鳴かぬなら鳴かない種類のほととぎす みんなちがってみんないんじゃね?
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夏越してもはや晩秋みたいだね いや気温じゃない、この関係が
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いつもより寝癖が目立つきみが今日拾ってきた何かしらのたまご
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今日は寒いけど家のなかはあったかい 深夜に舐めるラムレーズン味
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君の「自分が一番かわいい」という無謀な自信こそがかわいいと思う
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意識なき人も人なら陽に揺れるあの葉もある程度は人らしい
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信号の待ち時間にジリジリと 陽炎の音は 夏のスターター
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「さようなら」上手く言えない子どもらの「また明日」って生な約束
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「ほんとうの愛とであえば分かるわよ」あなたはほんとに分かっているの?
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風も木も自然はすべて感情の器になった詩人の瞳には
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つまさきからはじめて海を知るきみの港になりたくて手をつなぐ
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瓶に挿す名もない花がこの町で最初に看取る生き物になる
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部屋の片隅の 埃のような 言葉なんて いつだって無力な ものでしかない
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1999年 世界はお祭り 騒ぎだった 結局何も 変わらなかった
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