きっとすべて無意味なのかも八月の空はこんなに青がってるのに
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夜の雨あなたを過去にしてしまう手を伸ばしても夜はつかめず
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海へと向かう車で明日を想像してた鳥はまだ鳴かぬ
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掠れゆく文字を集めて押し花のフリする夏の忘れたい夢
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明日から電車に揺られる毎日を爆破しに来て日曜日の使者
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赤と青闘う空の夕暮れをのぞむ私の胸は静かだ
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人により人と呼ばれて人となる循環定義の蒸し暑い朝
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水晶を初めて買いてプログラム 秩父山塊渓谷に埋め
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西武池袋線入間駅から 地平に秩父ラヴェルのボレロ
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不条理の只中なる暗き夜に 蟋蟀飛ぶを見て驚く
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雷に蒼ざむ雲の相貌に 万物照らさる任務はたせりや
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カレーには 肉と芋だろ 思ってた ローリエあれば 問答無用
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「旅行にも行けない」の「も」の一文字に隔たりがあるわたしときみの
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終わらない祈りの中に生きている 手の天秤を傾けたまま
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死ぬことを 拒むことから 始まりて 病も癒えず 恨みつらみを
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できぬこと できないことを 区別して 泰然とする 大人になれず
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真実を 求め過ぎれば 最果ての 地にくたばる 結末となる
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魂の 堕落と共に 精神の 荒廃進む 崩壊の危機
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言うべきを 言ってるうちに 友もなく 理解もされぬ 異星人なり
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外見しか 見ないようでは 遅すぎる 大切なもの 忘れてしまい
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イライラを ぶつける妻の 心根を 糺す希望も 能力もなし
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地獄とは 針や血の海 見なくとも 両手両足 自由が利かぬ
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人間は 勝ち得た地位に 頓挫して 威張りて下を 見下すように
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出て行けと なじる襖の 向こうから 恐るべきとは 妻の存在
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一分の祈り捧げる黙祷に我も我もと降る蝉しぐれ
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黒点があわく浮きだす瞬間に三日月を食む 熟れた地球で
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汗殺すあなたに残る石鹸とタオルの湿り垂れて折りにし
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酔客が絶えず香りし早朝の 接続詞の詩 渡り鳥の死
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この身体しか知らないし引っ越しもできないという不自由がある
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真夜中を瞬く独り言みたく赤らかとした止まれの合図
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