家主なき ポストに溢る紙面から 麦秋しらす 空暇乞い
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覚えたての絵画に見立て君を口説く 煌めく瞳はフェルなんとかさ
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いつの日か夜に喰われた6等星でさえ満たない僕を見つけて
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(死にたい)の 裏にあるのは 退屈と動き出せない自己嫌悪
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春雨のやさしい牢に囚われてより鮮やかだ本の景色は
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横道に逸れた話は広がっていつしか波紋だらけの水面
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待ち人に手を振るように柔らかく橋に結ばれているストール
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「怖い世の中でございます」すれ違う 黒猫 (囁き) 挨拶を交わす
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忘れないでいてくださいと泣くきみの 笑顔をもう思い出せない
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だんだんと自分の価値が暗闇に溶けて消え行く膨大な夜
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春四月雀が挙げる五羽の子に包含されている死亡率
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「私しか知らない秘密」私の秘密しか知らないの
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ねたりないものね たりないものねだり ないものねだり ないものねだり
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つるぎたちワードプロセッサーという回転体に指を入れるな
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病悔し 君に出逢いて日々和む 体支えし 心も支えし
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ふたりして片っぽイヤホン聞きし曲 想い出とともに ひとり口ずさむ
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巷では失恋ソングが流れてた ふられる時までとっとくと誓う
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これは大臼で、神経・あじさわう概日リズムなどを圧潰
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思ってもいなければ詠む必要もないことばかり、無い言葉借り
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もうゃんし、どうでもいいわ」人海を泥の底からかえせ 春雷
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祝賀せし 年越すは睦まじき友と 頬垂る生温い寒天の微雨
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少しだけ 桜が遅く咲く地元 出会いも別れも少し遅め
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死んだ恋の匂いがするストーブで焼ける髪の毛に似て目に沁みる
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菜の花はなんの花 この雨の名はなあに 「菜種梅雨」と 隣のテレビが言いました
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薄青がレースカーテン突き抜けて夏まだ蝉は鳴いてないけど
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赤道の上に居たら4万キロ一日一周地球と回る
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人の欲には果てがなく断食をして死にたいと欲したりする
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を重ね同じ夢見たふたりにも やはり巡り来るそれぞれの明日
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脳用の油性インクが詰まっててグルグル書いてもカスと跡だけ
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息をしていたことだけを思い出す わたしたちは現象である
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