山二ツ 囲まれて引く 田草取り 手拭い下げて 捌きいるかな 1
早苗饗(さなぶり)に田植え歌の演習を乙女するなり麗しきかな 2
田掻く牛 牛久保谷戸で 控えめに 水を舐めるか 眼を細めつつ 2
4月に取り残されたように降る 少年時代の春雪の跡に 突如訃報が届きぬ 4
菜の花はなんの花 この雨の名はなあに 「菜種梅雨」と 隣のテレビが言いました 1
仏様を眠らする 安らかな春の風 お花が子守唄を奏でている 2
遠く遠く近くまで来(きた)る春の闇は 私の恋の夢を覆い隠していた 1
朧月よ 雲から見え隠れしてしまえ 私の恋心があなたに 少しくらいは分かるみたいに 2
春の空は泣いている 心は春雨のように泣いている 今の私と同じように 1
祖父の背におんぶしてもらいあたたかし 目を覚ませても息はスースー 3
「ほんとかな ほんとかな」今夜 七時半 夕休みしつつ 明日の夢想 0
焚き火くべパチパチ鳴りて底冷えの地に舞い落ちて夕映え覚(さ)ゆる 3
カラス等は 追いかけっこした尾羽根 また離れたり 新築の家の上でお戯れかも 3
睦月(むつき)の陽日々一日が長くなり凧を上げるの糸切れるまで 2