一分の祈り捧げる黙祷に我も我もと降る蝉しぐれ
12
黒点があわく浮きだす瞬間に三日月を食む 熟れた地球で
3
汗殺すあなたに残る石鹸とタオルの湿り垂れて折りにし
1
酔客が絶えず香りし早朝の 接続詞の詩 渡り鳥の死
1
この身体しか知らないし引っ越しもできないという不自由がある
10
真夜中を瞬く独り言みたく赤らかとした止まれの合図
3
今欲しい答えはこれやあれじゃなくその中間にあるものなんだ
11
耳寝せた君が慌てて横切ったとんびがひゅるり啼きつるらむと
1
天候が崩れた日だけの特産品 ぐっすり眠る古い巻貝
1
親密な 関係だけを 願いつつ 無視されながら 死んでゆくもの
0
ふと思う インターネットと スマートフォン 人と人とを 疎遠なものに
1
危機迫る 現代人の チャレンジは ぞっとするほど 大規模なもの
0
暗き歌 今の時代に よく似合う されど希望を 捨てたらあかん
0
哀れです やることだけは するにせよ やりたいことは 御法度ばかり
0
哀れです わけのわからぬ 不安だけ 若き美空の 立ち往生
0
哀れです 未来のことは わからぬが わかっています 死ぬことだけは
0
哀れです 他人を助ける 気は有れど 誰も頼らず 淋しい限り
0
哀れです ないものねだり するばかり 感謝の念は 微塵もあらず
0
哀れです 年を重ねて 幸せに なれる思うと 大きな誤算
0
山風がはこぶ青草匂い立つきみと歩いた風の通り道
4
自分の人生が死ぬのはいいけど 世界が崩れるのは苦しい
1
思っていたよりもずっと薄かったあなたのからだ 夜明けの湿度
0
やわらかく笑う貴方が意志を持ち突き付けてきた あの日のやいば
1
すべすべの椅子作る父の掌はざらざらなのさ、それが好きだよ。
3
瓦解することを恐れて息止めた優しさは何を残してくれたの
0
雨の昼 二重構造 風呂の中 光は透けて 母の胎内
1
身体があって性とかいうものがまだある世界と知ってはいるが
2
声が出るその一音前にいずる燈
0
ストラップ 大事な部分なくていいわよ あなたとの思い出 そこにつけるから
0
チープな青 君の唇 虹の終わり ぼくのすきなもの 詰め込んだ夏の日
0