日常はつづいていくと見せかけて急に落ちたらするから真夏
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風呂上がりまで気配を隠す名人か鞄の底の弁当箱てめえ
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ひと並みに驕るあの娘は3股目 一夜一夜に瞳転がす
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日暮道帰るひとみな胸元にスマホの明かりを灯して歩く
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お揃いの歯ブラシ捨ててアパートの 階段登る おもいでひとつ
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怪獣の放射火炎が残る夜の乾いたままのおべんとうばこ
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ネットって楽しい何か検索しそこからユーチューブいっちゃったりして
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疲れ果て温い湯船に浸かろうとせっせと張っていたのはお水
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ぶら歩き 亀の子束子たわしの工場抜け 庚申塚で都電眺める
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賃仕事 心に開いたその穴を 埋めてくれるはフライドポテト
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心にもないことを云い 下げたくもない頭下げ ポタージュを飲む
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図書カード雑に書かれた貴方の名十五年経て私の名前に
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アスファルトを あめんぼがごとく 歩く僕 安心していい 明日は嵐だ
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産まれおりしときに個性なきはずが三十年でそれぞれの道
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黒猫が横切る時は不幸せ そう聞き僕は並走しました
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身も蓋もなく見苦しい寂しさを言葉にしたい 語り 聴きたい
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ナルシストの愛 貴方に寂しくて独り充実してる日よ来い
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どこまでも自分嫌いの僕が好き ぐるぐる回るナルシスト・マン
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俺が死ぬとこから始まるドラマ見たさ故に定める生きる目標
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タレントの戦争批判をテレビ越しに見る人殺しの目に映る地獄
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終点のいろは何いろ移りゆく白きなる風知りてゐるかな
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ただの君 あのときの君 これも君 膨らみ満ちる その名前だけ
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お母さん、弟なんていらないよ鏡の国に置いていこうよ
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気を抜けば眠ってしまいそうなほど柔らかい皮の赤い桃
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だれも起こしに来なくなるまで寝てしまう竹の葉がさらさら降りつもる
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あをみ濃き葉によりそひて蔭に浮く宙を和するあぢさゐの白
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の射さぬ座敷牢には虫虫の声聞き描いた夏の絵日
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この納屋にも九度目の夏の塵積もる 兄の名残のはりの縄あと
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納屋に籠もり 兄の名残に安堵する 塵積もりゆくはりの縄あと
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ポケットに海のにおいをたくわえて眠る子どもの七度目の夏
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