若き頃 老人の病棟と 揶揄せしも 病老の待合 今その真ん中に在り
8
舞い込んだ黒い蜻蛉と秋風が倉庫の中を鼓舞して回る
13
水温の高きに帰れぬ鮭なのか故郷目指し迷子が増える
14
神風や御裳濯川の底までも千歳をかけて澄める月影
5
三笠山あめのしたもるしるしぞとさし出づる月の影のさやけさ
5
爽やかな 朝ドラ終わり 感動す 清し涙が 今日のはじまり
10
いつはあれど秋こそものの悲しけれ草葉に増さる袖の白露
5
池水の底に宿借る月見れば旅寝重ぬる秋ぞ悲しき
6
山の巣に帰る鴉の声絶えて野寺の松に月出でにけり
5
待つ宵の 月はおぼろに 霞んでも ほのかに 照らす 夜の世界を
23
空に雲庭に花にら群れ咲いて我が唇にヘルペスのあり
17
眠るのが怖いようなこんな夜に親の車で聞いた曲聞く
5
キャットタワー最上段で 黒糖の饅頭のよに ねこ、はみ出たる
8
他ではなく己に勝てと仏の言う勝てるわけない食欲の秋
10
熱帯夜やっと今日まで明日からは 朝晩ひんやり 風邪にご注意を
7
足りないの 心のスキマ 埋まらない 枯渇した愛を お酒で満たして
2
眠れない 月を見上げて 口ずさむ 失恋ソング 空に消えてく
3
ひとかけら 勇気をください この想い 砕けることが 決まっているから
8
役終えた 蝉のベッドは色落ち葉 夏と秋での葬送曲
4
名残り夏 引き際悪い前任者 新任”秋”に椅子を譲らず
4
ひと匙のいじわるを盛る君の目は汚い上に輝いている
24
衣替え済ませし後は炎天下 秋のブーツは二の足を踏む
7
頑張ると綴るあなたの白い文字 待っているよと声にしてみる
8
よそごとに 努める我を 中天の 待宵月が 待っててくれた
9
葦のむらなめて飛び去るアキアカネ夕陽に撃たれキラリ燃え立ち
11
眠剤が効いてこない夜もあるけれど ねこが寝てるから電気を消そう
9
見つめても見つめ返されはしないと信頼できる相手だ、月は
5
すっぴんでzoomに映るこの顔に私以外が何か思うか
2
よくもまあ こんな俺野獣を 手なずけて 飼い主キミがいないと。 さみしい仔狗
5
亡き兄の面影映す母の顔 任せときなよ 天につぶやく
8