頂上で飲んだコーラと汗の味 下り四キロあと二、三口
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炭酸と一番安い棒アイス 幼い記憶に亡き母と臨む
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キンキンに冷えたグラスの泡々が選ばなかった私を見せる
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温めると気が抜ける炭酸は私とどこか似ている気がした
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爽やかな夏を光らす汗よりも彼女を感じた 「シー・ブリーズ」   ベットの上で
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好きだったひとの匂いを思い出す感性ばかりちびてゆく夜
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少年よ此処でノビルをとった日々 スニーカーの裏にピリリと辛く
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傘の裏 胸の扉を叩く音 梅雨前線いま通過中
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目の前で帯がほどけていったときようやくぼくは覚悟を決めた
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あの列もタピオカこの行列もタピオカあの列はチーズハットグ
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永久に歯を磨いていたい夜は懇願をした君に会いたい
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恋しいと思う間もなく取り上げられたサイリウム 君に似ている
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二十三世紀でもまだひとりだが散歩みちにはシャクナゲ香る
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沈むもの君が傷だというのならわたしの浮かぶこれは何だろう
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君が代を貫き通す花はなし はやく枯れ死ね種も遺さず
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窓際の蚊取り線香いま落ちて漂う夏に蝉がさざめく
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幾重にも列なる波紋を泳ぐ鯉のぽっかりとひらいた柔和な口元
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制服とすれ違う道 あの夏の御霊は今もここに眠りて
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肉厚に葉っぱが膨らむ朝顔の一つしかない蕾をみてる
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消えたいと思う気持ちに人魚姫が可哀相とか思わなくなった
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病める日の知人気取りの呼び声に 背を向け流す音のモルヒネ
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デスクでは見せぬ横顔ガラス越し 癖毛と眼鏡焦げたマルボロ
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ちょっとなぜ私ばかりと燃え上がる炎先ほさきしゃくにもかんにもさわ
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プロフィール ただの一言memento moriと書いておきたい夜もある
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一もなくその四半すら最早なく何も残らぬ抜け殻ひとつ
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空蝉よ ぼくたちの死を悼んでくれよ カナカナカナシイ ミーンナカナシイ
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たましひの飢ゑかわくゆゑぬばたまのクロイツェルソナタくりかへし聴く
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五歳児かドンキーホーテで自分より前の世代のレトロ(ゲーム)で戯れ
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帰り道目の前横切る少年はサッカーボール片手に走る
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気になって蛹を背から切り開く ほら夏という夏がもつれる
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