「せんせい」と男の声を混ぜる彼が、生徒でなくとも俺は先生
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雛の頃つむじを見下ろしたるこれが巣立つ時には仰ぎ見る彼
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置き去りの机の横の椅子 いつも忘れられるのは俺の方だ
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やっぱりね待っても来ないキシリッシュとっくに味が抜けてしまったわ
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明日から一気に冷えるらしいけどフライングして今夜から鍋
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たっぷりのウールの壁におおわれた首のうぶ毛をさわさわなぞる
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枕詞だけが息づく界隈に鮮やかすぎる言葉の人よ
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マジパンとクリームの味がしてそうなサンタ服着た君のデコルテ
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遠くなら美しいまま、朽ちぬまま。記憶の瞳、近視であれよ
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生活を断片的に切り取って集めて誰にも渡したくない
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マルクスはお腹を空かせ亡命す。かのヘーゲルを逆立ちさせて。
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革命は前夜に消され意気消沈。僕は怠惰にマルクス齧る。
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溜息は幸せが逃げると言うけれど それでもいいから一息つかせて。
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革命や木枯らし弾くよピアニスト。ピアノの詩人、月夜に詠う。
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どれだけこの瞬間を待っていたかしら こんなに優しい気持ちになるのね
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街ははやクリスマスの歌かき鳴らす。僕の心は木枯らしのまま。
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雲かかる月の幻影光ゆく。空から一粒涙流れる。
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月の歌。僕は月に恋してる。君の面影、月に重ねて。
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公園で蹴鞠をするよ子供たち。イチョウの香り身に纏いつつ
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吹き荒ぶ十一月の風の日にパフパフ鳴らす豆腐屋の音
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公園の秋の香りを吹き抜ける。風のように元気な子たち
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秋風や昔々の悲恋かなこの赤この黃散る一話ずつ
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ニセモノがホンモノみたいな顔をして十一月の雨こんなにもやさしい
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寄る辺ないテーブルひとつ用意してぬくもりみたいな鍋を囲もう
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無能でも生きていいのだ俺を見ろ、と言えるほどの無能でもなく
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信号待つ私がメロスだったならこの空の赤を君と見れたのに
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昨日から続く明日が今日ならば、私は私をいつやめようか
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霜柱踏まれさっくり音鳴らし何かを支えることもないまま
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野良猫と海の香りとキオスクとあなたと暮らすこの街が好き
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もう少し、もう少しだけと止まらぬ手 痛い目見るのは明日の私
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