花便りとどきにけりなたれこめて春のゆくへも知らぬわが身に
0
あんず咲くローマの春の謝肉祭やそのちまたにあへる子や誰
0
さざなみの音が私をさらっていった ぬけがらだけがここにある今
4
灰桜 次に生まれて来るのなら貴方に愛されたいただそれだけ
0
ブスなんてこの世に誰もいないと思う世界で一人私以外は
0
狷介な雄のけもののにほひして走りすぎにし体育少年
3
一日の終わりは明日の準備してからあおるビール一口
0
性別の「らしさ」規範をこの歳で既に学んだ甥が哀しい
1
バター練りしぼるクッキーいくつものハートを描く血の味はせず
3
そむきゆく小指の意思を感じつつ嘘はつかずに好きだよという
0
夕かげの名残りたゆたふくれなゐの山の端みればいでし月かも
0
あくびするまひるまのきみ ポケットにカフェオレ缶をそっとねじ込む
0
レモネードまぜたマドラー口に入れ熱のある日のしぐさを真似る
1
筋肉と血管ばかりの人形と二階廊下でステップダンス
0
かき氷のシロップで染める恋心初めてだからレモンにしよう
0
くらげには単三電池あげてみたすごく光ってくるくる回る
0
半額のシール貼られたばっかりの回鍋肉を抱きしめ帰る
0
すやすやと易々やすやす眠る君揺らし「うなされてたよ」といけずする夜
0
所詮この世は常に無い物ねだり届かないからこそ美しい
0
芸術はどこからくるんだろうねと泣く僕を見て呟いた君
4
ひさかたのひかりの朝のふつか酔ひ所詮この世は一炊の夢
5
コロッケパン噛みしめながら夜からの雨で時空が続くとわかる
1
くれはとり綾波レイの缶バッチリュックにつけて上京します
0
甘栗を切ったばかりの爪で剥くやさしさだけがとりえのわたし
0
むらさめにひぐらしのこゑ途絶えしてさりゆく夏の花園のゆめ
1
やるやると嘯いたまま過ぎてゆく有限だとはわからぬままで
1
後悔をいつだってよく解ってたそれでも残る課題の山よ
0
ゆすらうめ薄くやさしきももいろのはなさく庭をしばしたたずむ
1
たまるものお金と水と醤油かなさらさらさらと流れても行く
1
穏やかな春の午睡の中の君痛々しいほどあぁ愛おしく
0