若き人 理系の君は 語りしか 論理精緻の 仏の世界
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ねこはただ 外をひたすら見つめ居る ちいさなおつむで何を思ふか
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6本の足を縮めて転がれる蟬の死骸に遠き夕焼け
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電車内の人々はスマホに夢中 ドアが開くたびに蝉の声 
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剪定は伐採にあらずと女房はわれを睨んでため息を吐く
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肘のあたりが痒くなる しばらく経って蚊に刺されたと気づく
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真つ直ぐに飛び来る蜻蜒打ちたれば呆気なく死に首まがりたり
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麻酔で瞬時に意識が無くなる生から死もこんな感じだろう
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明け暮れがだいぶ短くなりにけり 夜明け前の闇の深きこと
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また出たよ夏バテでなく「残暑バテ」 言葉にしないで導かれるから
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足どりに 「一人で行ける」 自信見せ 子どもの成長 夏が見送る
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どうせなら冬の間もいなさいと思ったりする居座る気圧
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客だけど同志のような人だった 辞めてく君と最後の仕事
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ことごとに はらたつおもい あいじょうも うすれたせいか アキのかぜふく
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ラジオから シェルブールの雨傘 ゆくりなく 無音の窓に 豪雨の雨脚
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アスファルトの割れ目に育つエノコロ草種を抱えてゆらゆらしなる
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ボウリング  久方ぶりに挑戦し  身体動かし  ビールがうまい
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今朝の風  涼やかに髪を吹き抜けて  猛暑日続くも  ホッとひといき
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寂しさは 夜空吹き抜け 失くなった 一番星の下 二人だけ
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眠れずに ようやく微睡む 明け方の 鳥の囀りは容赦なく
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隣家の屋根に乗っかる大き月明日は帰京の友と眺むる
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明日から長月、朝焼けと絹雲で秋を感じ、気温ではまだ真夏か
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めさめれば すなにうまって 殻やぶる うみはすぐそこ とりがつっつく
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ガス状の いきものあらわれ にんげんを とりこんでから ミトコンドリア化す / SF
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早割で全国大会参加せむ拙い歌の入選ありや
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若き日の神楽岡墓地その奥にくちなし匂ふアパートありし
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小粒なる赤紫に熟れた実にヒヨの群がる南京黄櫨の
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のうないに あびるとたまる つきひかり ろくじゅうねんぶん ちゃぷんちゃぷん
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解ろうとしないまま眠る教室の隅に今でも私は俯く
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母さんが婆ちゃんになり私にも消えてゆく日が絶対に来る
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