mizuno
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絶望と恐怖と不安の実感がひたりと足を濡らす冷たさ
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色までも寒く思える白昼よ。隣家の漆喰を雪かと思う。
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あのクレーン、もっと東にあったっけ。鉄獣、闊歩し、街が生まれる。
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青空に雲はないのに新品の靴はずうっと痛いまま
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うつくしくとてもせつない曲だけのプレイリストを夜更けと名づけた
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網膜を叩く熱射の暴力に、コンタクトレンズのか弱きことよ。
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雨の降るまえにと外に飛び出して帰るころには汗に濡れたる
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いつも同じもう二度とない夕暮れにスマホをかざすパノラマ写真
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黒塊の雲の切れ目に赫光が滴り落ちる不吉の真夏
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暗闇の広がる崖へ確実に歩みを進める気分はどうだ?
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君は明日の明日の明日のその先で確実に死ぬ。どうしようもなく。
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朝八時に起きられるかってのゴミ出しに家庭の予定が規定されてる
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友が去りし青暗き夜の野良猫の泣き声に聴く旅立ちの歌
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何もかも思いどおりに動かない世界に馬鹿めと不貞腐れてみる
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特別なものだけを見て、唯一のことをしたいよ、変わらぬ夜に。
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屋上でバーベキューなどする者どもよ。天に雲なく光や強し。
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思い出す故郷ふるさとはなく、懐かしむ友人もなし、よるはただ濃く。
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眠れない夜の空虚はタブレットを触っていても無くならないのに
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本当にやりたいことが何もなくてくだらないことをし続けてしまう
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何もない焦燥をまた埋めるため物質的な心になって
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ぬくもりは充電中のスマホだけ。聴こえる声はYouTubeだけ。
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我が春は、すぐに夕暮れ、まだ夕暮れ。生くるに短く、死ぬには長し。
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黒濡れのアスファルトから立ちのぼる蒸れた匂いが春を告げた
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「だって別に死んだっていいし」とせせら笑ういじけたガキの眼をば見よや
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雨上がりの落ちてきそうに重い雲が風に裂かれて夕焼けが浮かぶ
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清くもなく濁るでもない死にかたの半濁音の間抜けな響き
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平日に休みを取ったことだから誰もいらないところへ行こうか
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なにひとつ白きものなき夕暮れに感傷だけが輝いている
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まるでそうしないと眠れないみたいに夜の歌を探し続けてる
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ドアを開けて。風の強さに足が止まる。夜が深すぎて出られないまま。
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