紫田ねるを💐(しだ ねるを)
16
16
投稿数
50

右も左もわからないまま勢いではじめてしまいました。

碧空にひらりひらりと浮かぶ蝶描く軌道は御霊に同じ
12
祈りとふ最大級の無力さよ 暗闇にコンロの火は灯火に似て
8
亡骸となりゆく白き虫の子に枯葉の揺籠作りて寝かす
8
黒柿の痕の残りし道を見て「これなに」と問ふ子に言葉をさがす
8
虫の子は破れた身体のうみにいてのたうつことなく斃れていたり
8
記憶とは遠ざかる海 離れてゆくのはわたしなのかも
13
あまりにも煤けた愛だった 初めから全てを盗った薄い唇
6
掻き抱くそびらにまわる手の爪は粘土が詰まる Camille Claudelカミーユ・クローデル
6
この愛は匣の中だけ不滅なの ドールハウスであなたと眠る
6
人の種の絶滅危惧は見えないとふ浅ましさ 絶へてはならぬ
8
冬薔薇ふゆさうび雨滴の重さ一身にそのかんばせは悲しき女王
13
閉じてゆく世界の果ては何処かな 水槽に遊ぶ稚魚か我らは
9
霜の冷笑浴びつつも立ち昇る篝火花の真白きほむら
8
干したシャツ、仏壇、おりん、壁のシミ 亡き人の猫つひに戻らず
13
透き通る波打ち際の結晶はいつかこぼしたガラスの記憶
15
ぬばたまの立ち枯れ紫陽花暗がりに佇む姿は廃墟のごとく
8
澱む部屋そば茶のさみどりいやに光る花くたす雨、ふるわたしに
12
春キャベツ やわらかくって千切れやすくて もみくちゃの私の芯
6
五月雨の戦場ヶ原炎燃え影なき媼のせなは悲しき
8
キャンディーボール 子が持てば古の竜の護りし珠となりにき
7
翠玉の光閉じ込む水風船幼子の掌中に在れ
12
血の滲む憎悪でさへも風葬でいずれ綺麗な骨になるから
12
待っててねいつか行くからその時はチュール持ってく猫じゃらしもね
11
色褪せて像も薄れていたとしてきみの影まで消えたりしない
12
記憶とは遠ざかるほど断片だ褪せた写真だもういないから
7
脳内の写真館に椅子を出しあの子の前でしばし休憩
9
やっと来たずっと待ってたちょっと遅いよ昔の家で寛ごう 夢で
3
脳内の写真館に入り浸り大事なあの子にそっと手を置く
11
「取り壊し」の立札かかる廃屋に的皪てきれきと燃ゆる梅花のほむら
10
緑児の時期より見知った顔なれば吾子は亡き医師の手には怯えず
12