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早生の蜜柑の皮を破って香り満つ 今から私は生まれ変わって
4
シナモンの香りをまとう赤い鳥 ぶどう畑の夕陽に消えた
1
だいじょうぶ だいじょうぶよ、と 言ってやる そのためだけに 僕は歩ける
1
もう僕は 歌もさえずれないけれど この羽ばたきが 風となれば、と
2
溢れ出る梨のしずくを受け止めるには半袖の肘でなければ
2
奥へゆくほどに濃くなる古書店の匂いに本の樹海を惑う
16
みてごらんひつじがたくさんいるからと君が指さす先には白雲
11
通知画面よりも明るくまたたいた心を君よ 知らないだろう
3
秋暑き昨日までは「クーラー」と今日は「散歩」で汗かけぬける
2
まばたきの速さで何を考えているのかわかる はるか向こうで
0
炭酸水の泡に生まれ変わってはじけて消えたい秋の静けさ
5
この世界でのルールでは人格は体一個に一人だという
1
ピアノ線を張るのはやがて滑り失せてしまう山を
听
(
き
)
き留めるため
4
雨の降る日暮れ追い越し秋が来て 花は散ったか 月は満ちたか
1
常温で流し込むストロングゼロストロングゼロストロングゼロ
2
君の目が最近ずっと腫れている僕は気づかぬ振りを続ける
1
ウィンドウを開けばここは一面のみっくみっくに土砂降りの星
0
死ぬ予定しかない犬である我ら舌を垂らして都市をうろつく
1
「あぁそうか、今年もあと〇ヶ月だね」だけ繰り返し終わる人生
2
ふにふにと暮れてゆく秋三毛猫のきんたまみたいな銀杏ふたつ
1
静けさの結界いっしゅん解くように咳払いする展示室B
7
一人居の祖父の裏庭わっさりと今年も葡萄ずっといきてて
9
まるい虹かかればみんなペンを置き窓に集まる子供の目をして
8
ふて寝する
猫
(
きみ
)
の毛皮いぶされて腹をもふれば除虫菊の香
1
百年後私は鷗 両翼にその悲しみを湛えて生きる
1
ともだちができますように ともだちがなにかがいつかわかりますように
6
シマシマのチェックスカート座布団の上でゆるゆる座り居る客
3
海は嫌いプールも嫌い日差しも嫌い 夏が好きなのはサイダーのおかげ
1
失った生身の影を探しつつ人格データのさまよう未来
1
目薬を
注
(
さ
)
してぼやけた街の灯とスマホの光はどちらが遥か
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