隣り合う ベンチで女性が彼方かなた向く 少女じゃなくて 老婆の方か
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階段を上れば明かる桜木の塀に隠るる集いのありて
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ぼけ林檎 檸檬と砂糖で煮て旨し 外れアボカドさて如何にせむ
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私のものと思いし国の旗そんな厭味になっちまったか
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どうもって先行く我に「はい」と言う譲りし人の響く心音「こころね」
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春淡いかすみの雲は花びらのひかりに染まるうすいかがやき
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「なんにでもなれる」と言われたあの春の教室にまだ私だけ居る
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何となく幸せ感じる一瞬が 消えずに続くすべないものか
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垂れ込めた 重い雲の隙間から ひとすじ陽の光 桜輝く
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水温み 保湿ケアもやうやう終はり 使ひ余りぬ ハンドクリーム
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子が髪を切られてる間に遠ざかる「戦争中止」のスピーカー音
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施設から介護に帰る先輩のくるまを照らす半分の月
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舞い落ちる 花も 頭の高さまで 積もってずっと 解け残ればいい
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早くから武道で鍛えし先輩は幾つになるも頼もしく見え
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妬み書くメモを捨て去り夢追いの光りし風を胸へ抱こう
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人盛り 駐車のできぬ花盛り 今年はGoogleマップで花見
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人間の顔にはダニがこの星の顔には俺ら人間がいる
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千段を登りつめて東照宮駿河湾凪ぎ風晴々はればれ
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両の手に紙の手触りその重み彼女の横で流れる静謐
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⋯リルと⋯ビア⋯ミン⋯ヂン⋯チンと名を言って卓に並べて飲む薬かな
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ほんのりと東を照らす朝の日は飛び立つさぎの透ける羽色
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猫柄の茶碗に 猫柄マグカップ 猫マドラーに キティのピーラー/うちのキッチン
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君が代も無くふつり閉ずさまを聴き今朝は閉じたと案内も聴く/ラジオR2終了に
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春休み息子家族のUターンにぎわいの跡残したままの
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山頂に捧げしカフェの湯気へ乞う友との無事の劔の下山
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鉄錆を研ぎ澄ませれば三日月の芯より清き真(まこと)極めり
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水仙は白と緑でできている「仕事やめて」と言われた昨日
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『エレジー』という名の記憶断片が七十年のよすがと知りぬ
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老猫を抱き上げ軽さ驚いてうまいものなど食わしてやろと
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積読を発掘中に重複をまた二つほど見つけ呆れる/持ってたのかよ!
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